日本アドラー心理学会のホームページより
”わたし”があなたの人生を生きるのでもなく、”あなた”がわたしの人生を生きるのでもない。
”わたし”が私の人生を生きる。
”あなた”があなたの人生を生きる。
あなたの人生はあなたが生きていいのですよ。
あなたの課題はあなたが解いていいのですよ。
あなたの課題を他人に解かせようとしたり、他人の課題を無断で解こうとしたりしてはいませんか?
協力を考える時に、相手に協力させようとするのではなく、あなたが協力できることについて考えてみませんか?
「やる気」とは、積極性とか、自発性とか、生きる力とかだと思いますが、アドラー心理学では、少しニュアンスが変ですが、“勇気”(カレッジ)と言っています。
人間は潜在的にやる気があります。
やる気をださせるとは、相手を勇気づけることです。
人は、潜在的に働くのが好きで、潜在的に勤勉で、潜在的に勉強が好きなのです。だから放っておくと、かなりよく働くものなのです。
≪人間の本質は、善であるという考え方です。自分で成長していこうとする傾向を持っていると考えています。社会、職場だけでなく、子供に対してもこの考え方は通用します。≫
会社に入ったばかりの新入社員の目は、キラキラ輝いています。それが何ヶ月かすると、やる気があるのかと叱られています。それは、「やる気」がなくなったのではなくて、それをうまく引き出してやることができなかった。
もっと正確に言うと、引き出さないように働きかけるような、心理学的に言いますと「勇気くじき」をした結果なのだと思います。
今の若い人たちにやる気がないとしたら、それは子供の頃からの長い体験で、「勇気くじき」を繰り返し繰り返し、たくさんやってこられたからだと思います。だから、やる気をださせるとか、やる気をもたせるという問題ではなく、いかに本来もっているやる気を、うまく導き出すかということだろうと思うのです。
会社で、部下が失敗をしたり、問題を起こしたり、言う事を聞かなくても、「自分の指導の仕方が悪かった。管理能力がない。」などと自分を責める必要はありません。
要するに、部下の能力、性格が悪かっただけですから。(笑)
部下の行動や性格を、上司が自由自在に変えられると思わないほうが良いのです。
まず、部下が失敗したら、「ああ、この子はバカなんだ」とまず思うこと。すると楽になります。それで大切なことは、そのおバカさんをどう援助するかということです。
過ぎ去った失敗を反省するのではなくて、自分の対応の仕方を変えることできっと部下は変わっていく。すぐには変わらないけれども、少しずつ必ず変わっていきます。
≪子供の行動や性格、子供の人生を親が自由に変えられると思わないほうが良いのです。≫
理想の部下はいません
理想の部下-現実の部下=欠点
会社にとって、上司である自分にとって理想の部下から、現実の部下を引くと、欠点ばかりが見えてしまいます。上司が思っている理想の部下は、どこにもいつまでたってもいません。いるのは現実のこの部下だけです。
自分の好みをまず捨てる。
上司がそれを好きだから、嫌いだからと言うことで部下を評価して、「それはいけない」「それをやめなさい」「はやくしなさい」と言わないでください。
判断の仕方を変えましょう。
部下を育てるということは、会社に迷惑をかけない一人前の社員になってもらう。さらに、会社の役に立つ社員になるのが目標です。だから、上司は新入社員には、「人に迷惑をかけないで、会社の役に立つ」ということを絶えず教えなければなりません。
迷惑をかけないことと、バカと言われたり、能力がないと悪く評価されることとは違います。つまり、人に迷惑をかけなければ、悪く言われても良いのです。
人から「お前はバカだ」と言われて、自分の知能指数が下がることは決してありません。逆に「あなたは頭がいい」と言われても、自分の知能指数は上がりません。自分の本質は、他人の評価で変わることはないのです。
この考え方は、人を育てる基本的な法則です。
マイナスの言葉かけをやめる
部下が臆病になって「やる気」を失う原因は、人が自分のことをどう思っているかを気にすることです。上司の視線ばかりを気にしています。
上司が自分のことをどう思うかなんて気にしなくていいのです。自分が正しいと思う事をすればよいし、自分が会社の役に立てるようにと考えて行動すればよいのです。
上司は、自分の価値観(要するに好き嫌い)を部下に押し付けないでください。そうすれば、部下にプラスの言葉をかけることができるようになります。
「それはいけない」「それをやめなさい」「はやくしなさい」というマイナスの言葉かけを続けるとどうなるでしょうか。
最初に毒ガスの元栓を締めること。
やる気を育てるためには、まずやる気をくじく言葉かけをやめて下さい。悪い言葉をかけるくらいだったら、何も言葉をかけないほうがよいかもしれません。うるさく言わずに、ちょっと離れてまず観察してみる。だいだい、ひまな上司ほど、部下の仕事に口を出します。
その上司の口ぐせは「忙しい、忙しい。」(笑)
勇気づける
部下を叱ることはよくありません。悪い行動を叱ることは、ほとんど上司の価値観から出たものですから、悪い行動を減らそうと思わないことです。それよりも、いい行動を増やそうと考えてみてください。
いい行動をしていると、当然悪い行動をしている時間が減っていきます。
人間は、いい言葉をかけられだり、承認されたり、受け入れられたり、ほめられたりすることが大好きです。
だから、人から認められたいとか尊敬されたいと思います。
それがたまたまダメになったとします。「どうも自分は人から受け入れられない、認められない、尊敬されない」と思うと、それはそれでいいやと割り切れるかというと、絶対に割り切れないものなのです。
それだったら、叱られようとか、拒否されようとか、軽蔑されようと思うのです。
悪いものでもいいから、みんなと関係あるほうが、ぜんぜん関係ないよりいいと感じるのです。
無視されるより、嫌がられるほうがまだましと考えてしまいます。
(交流分析マイナスのストローク)
では、どうすればよいかと言うと、部下を勇気づけるのです。
ほめることではありません。
ほめられて仕事をすると、上司にほめられるために仕事をするようになります。叱られないために仕事をするよりはましかもしれませんが、自分のために仕事をするのではないのですから、本当の「やる気」とは違います。
勇気づけるとは、難しい技術ですが、次の二つの言葉を使ってください。
それは、「ありがとう」と「うれしい」という言葉です。
部下が仕事を取って帰ってきた時、
「いい仕事をしたね。ありがとう。」と言えますか。
「いい仕事をしたね。私もうれしいよ。」 →「承認」のIメッセージ
「きみがうれしそうだから、わたしもうれしいよ。」
部下のプラスの部分に注目し、部下にプラスの言葉をかけて勇気づけれるようになると、初めて上司と部下は本当に対等の関係になり、本当に協力できるようになります。
あなたの存在が、会社の役に立っています。
ありがとう。
これをコーチングでは、存在の承認と言います。