笑いが遺伝子のスイッチをオンに
私は、現在、「心と遺伝子研究会」という、心が遺伝子にどのような影響を及ぼすのかを研究する会の代表を務めています。今年は、この研究会と吉本興業による3回のジョイント・イベントを行いました。【質問】サムシング・グレート」の意思を感じられたことがあるのでしょうか。
なぜ吉本興業と組んだかといえば、笑いがどのように遺伝子をスイッチオンするのか、という研究を私達が進めているからです。
遺伝子は、一般には固定的に考えられていますが、実は、多くの遺伝子はまだ眠っているか、フル稼働していないのです。
もし、十分に働いていない遺伝子のスイッチをオンにして都合の悪い遺伝子をオフにすることができれば、私達人間に新たな可能性が生まれるかもしれません。
なぜ笑いを選んだか。医学的には充分証明されていないものの、昔から笑いが体に良く病気を治す場合があると知られていました。笑いが健康にいいということについての科学的データを集めたいと思ったからです。
昨年1月につくばノバホールで、糖尿病の患者さんを含めた計1000人を集め、公開実験を行いました。糖尿病というのは血糖値が通常よりも高い病気ですが、私達はこの高い血糖値が笑いによって下がるのではないか、という仮説を立てたのです。実験は2日間に分けて行いました。
1日目は大学の教授に糖尿病についての講義をしてもらい、2日目は吉本興業推薦のB&Bという漫才師さんに公演をお願いしました。どちらも昼食後に聞いてもらいました。
ジョークも少なく淡々とした大学の先生の講義の後は、血糖値が食前に較べて100mlあたり123mgもあがりました。 それに較べ、B&Bの漫才によく笑った後の血糖値の上昇は、100mlあたり77mgでした。
つまり、46mgの差が出た訳です。
この結果を、アメリカの糖尿病学会誌「Diabetes Care」に発表し、2003年5月号に掲載されました。このニュースをロイター通信が注目して取り上げ、全世界に発信されました。きっと、この実験が将来の医療を変える様なものだったからでしょう。
私は、楽しい治療を始める魁になりたい、と思っておりますので、そういったデータをつくばから発信していきたいのです。 (一部編集しました。)
【答え】難しい質問です。心にはいろいろな心があるわけで、大体、心の定義というのはできないですから、心の動きしかわからない。
私には1つの仮説があります。
楽しい・うれしい・感動・喜びなどのポジティブな感情がいい遺伝子のスイッチをオンにし、悩み・苦しみなどのネガティブな思いが悪い遺伝子のスイッチをオンするのではないか、いう説です。これを何とか証明したいと思い、笑いから入りましたが、祈りのような非常にスピリチュアルな感情も、私たちの遺伝子のスイッチのオンとオフに関係するのではないかと思っています。その辺はなかなか難しい。最近、アメリカで、祈りが治療効果をもつという論文が医学の雑誌に載りだしました。宗教的なところにも、科学のメスが入りつつあると考えています。
また、生命の設計図は、でたらめに書けるものではないと感じています。そうであれば、意思のようなものがあったかもしれないと思っています。
これを証明しろといわれたら、科学的には証明できません。宇宙には人間を作るような意思のようなものがあったのかどうか、
物理的に可能ならば、宇宙は何個できていてもいいのです。すると、他ならぬこの宇宙に我々はなぜ存在するのか、という疑問が生じます。そうなると、「サムシング・グレート」が、我々にこの宇宙を選ばせたという見方もでてくる。
無数にある宇宙の1つに私たちが生きているのは、何か、この宇宙自体が理解されることを願っているというような感じがしないでもありません。しかし、これは科学的に証明できることではない。まさに私の心の働きにすぎないのかもしれませんが、そういう気持ちはありますね。