Inner management 02(インナーマネジメント)

社員の心に直接アプローチする、心理学を使った経営マネジメント理論。
指示命令ではなく「共感」。思考ではなく「感情・感性・感覚」によってマネジメントする。

 Back


No.1 マネジメントの心理学 

 これからのマネジメント、新しい考え方「インナーマネジメント」の提案です。
  これまでの合理的マネジメントでは、企業の目的は成果・利潤の追求であり、発展・継続であるといわれていました。そのためには社会に認められ、消費者に受け入れられなければなりませんから、社会的貢献とかCI(企業の存在意義)の明確化などが求められていました。顧客満足の向上、イメージアップなどの言葉もあります。
 そのため、マニュアルを作成し、社員の行動を管理し、PDaサイクルを回して、評価する。
 目標を設定し、その経過・結果をビジュアル化して明示し、業績に応じた賃金を支払う制度「業績給」を導入する。コンピテンシーと言って優秀な社員の考え方、行動を分析し、社員教育に導入する。これが合理的なマネジメントでした。
 成果、効率化を考えると人件費の削減、経費節減に目が向いてしまいます。契約社員や派遣社員、パート、アルバイトを活用したほうが合理的です。その結果、今まで日本の企業を支えてきた「当たり前のもの」が崩壊してしまいました。


No.2 仕事に対する誠意 

 各自の技能や知識の蓄積、ノウハウが企業の財産です。
 IT技術、機械化によって、この部分の標準化ができましたが、肝心の人間の知恵の継承ができなくなってしまいました。人間関係の希薄化により、コミュニケーションがうまくいかなくなり、雰囲気が悪くなってしまいました。
 やる気、働き甲斐、楽しさなどは「目に見えない部分」ですから、計数化することが難しく、この部分のマネジメントは、各個人の人間力に頼っていた部分ですから、今まで表に出てこなかったのです。

 そして、その基礎にあるのは「仕事に対する誠意」です。
 日本人は本質的に真面目であり、仕事、職に忠実でした。それが、マネーゲーム、お金儲けがすべてというような風潮になり、企業倫理が怪しくなっています。コンプライアンス(法令順守)という言葉もありますが、言われなくても当たり前のことだったはずなのです。
 企業で働く一人ひとりの心の中の感情、気持ちに直接アプローチすることで、もっとシンプルで効果的なマネジメントが可能になるのではないでしょうか。
 これを「インナーマネジメント」と名づけました。

 インナーマネジメントでは、指示命令ではなく、「共感」がキーワードになります。思考ではなく、感情、感性、感覚によってマネジメントしようというものです。

 企業の目的は利潤追求、発展・継続ではなくて、組織を構成している人間一人ひとりの「豊かさ」「幸せ」「成長」「安心」「安定」です。新しい価値観の提案のようですが、実は、バブル以前の高度成長期「日本型マネジメント」にはこの考え方があったはずなのです。
 なぜ、我々は忘れてしまったのでしょうか。
 行き過ぎた成果主義を修正して、マネジメントの再構築をしようという提案です。


No.3 成果主義の弊害 

 今まで、その欠陥マネジメントである合理主義的マネジメントが何とか機能してきたのは、従業員たちがその欠陥部分を人間的な包容力で補い、タテマエとホンネをうまく使い分けて、うやむやにごまかしてきたからなのです。
 合理性よりも人間的な心暖かい情を大切にしてきた人が多かったからなのです。だから、管理を強化し、近代的で精密な経営手法を導入すると、企業がおかしくなります。ごまかしが効かなくなるからです。

 バブルの崩壊が起った1992年以降、日本の多くの企業がアメリカの近代的な合理主義的経営手法を導入しました。当時の産業界の常識として、日本の企業経営手法は遅れており、これらの経営手法を導入することにより企業は必ず活性化すると考えられ信じられていました。そして、おかしくなっていきました。

 合理主義的経営の典型的なものが成果主義です。報酬を業務の成果に直接リンクすれば、従業員はより多くの報酬を求めていっそう頑張るはずだという考えであり、確かに頭で考えると、全体として活性化するような気がします。しかし、実態は違っていました。
 まず、業績の成果は簡単に数値化できません。目先の売上高や利益率だけです。
 そしてその数字はごまかせます。
 目標に対する達成度を設定すると、わざと低い目標を設定します。全員が成果が出やすい業務に偏り、長期的で地道な業務がおろそかになります。さらに、その成果の評価に膨大なエネルギーと時間を必要としてしまいます。部門別の業績評価により事業部間の連携もうまくいきません。
 そして何よりも成果主義は、会社内の雰囲気を暗くします。人間関係がギスギスし、部下と上司の関係も不信感でいっぱいになってしまいます。
 その結果として、当初の考えとは裏腹に、会社の活力が下がり、収益も悪化し、ドンヨリとした雰囲気が漂い、心身に変調をきたす従業員が激増します。


「成果主義の弊害」
  • 業績の成果は簡単に数値化できない。
  • 評価基準の設定が難しく、膨大なエネルギーと時間を使う。
  • 社内の雰囲気を暗くし、人間関係が悪くなる。
  • 会社の活力が低下し、業績が悪化する。

  •  マネジメントの前提になっている「人間も組織も合理的な存在である」という考え方の間違いがお解りいただけたでしょうか。
     人間でも組織でも「見えない部分」は、はるかに大きくはるかに大切で、本質的なものです。
    それを無視したマネジメント、合理的経営は欠陥商品だったのです。
     上司の欠点をカバーしてくれる優秀な部下はいません。上司のダメさ加減がそのまま業務に反映してしまうし、皆が責任逃れをしてしまいます。この「責任逃れ」はある意味では合理的な行為であり、「泥をかぶる」行為は非合理的です。
     つまり、皆が皆、合理的な行動に終始すると会社はおかしくなってしまうのです。

    私自身の体験です

     私は大学を出てからインテリア家具のルート営業を2年間経験した後、25歳の時から42歳まで東証一部上場の(一応一流といわれている)住宅会社の営業社員として飛び込みセールスの仕事をしていました。

      いろいろな思い出、辛い経験をしました。現在、人材育成コンサルタントとして仕事をしていますが、その意味では当時の営業の体験は本当に勉強になりました。
     当時、何がいちばん辛かったかというと、ノルマです。
     業績評価によって報酬が支払われるのですが、社員の成果が課長の机の後ろにグラフで張り出されており、ノルマが達成されるとそのグラフの上に花輪がつけられます。月末近くになり、そのグラフが無言の圧力になり、会社に行くのが辛くてたまりませんでした。たまたま達成した月があっても、一ヶ月はすぐ経ちます。いつも追いかけられているようで気が休まりませんでした。
     目先の数字が欲しくなり、隠語で「タコ足」といっていましたが、タコが自分の足を自分で食べるように、今月の成績が欲しくて自分で自分の金を使って成績が上がったように報告することもありました。
     月末、成績が達成できない時、所長から「今から50件の飛び込みに言って来い」といじめのような仕打ちを受けたこともありました。

     営業社員同士で仕事の取り合いなどもあり、雰囲気も悪く、社員の人間関係も表面的です。仕事をしていないような振りをして、隠れて仕事をしました。成績だけ上げていれば上司は何も言いません。朝から喫茶店に居ろうがパチンコをしていようが、誰も文句を言わない。隠れて、マージャンをしていたこともありました。ある意味、いい会社でした。
     内勤の事務社員と営業マン、建築の技術者の間にも差別のような雰囲気がありました。社員の資格、呼び名も分かれていました。
     上司は、皆転勤族であり、何年かごとに変わり、指示命令、書類作成が仕事です。そして嫌な上司ほど出世していきました。
     自分にとっていい上司は、会社にとってはダメな管理職として転勤していきます。
     お客を騙しても成績を上げたほうが勝ちみたいな会社の雰囲気があり、収入の面では稼げる会社でしたが、仕事の喜びを感じることは少なかったように思います。お客様に自信を持って自社の住宅を営業することができなくなっていました。
     会社を辞めた時、空しくて悲しかったのですが、なぜか開放感も感じていました。
     その後、この会社は業績も悪化し続け、倒産して別の会社に吸収合併されました。早めに見切りをつけたのは結果的に良かったと思いました。


    No.4 日本人の特質と日本型経営 

     もともと、日本人は、「職場とは収入を得る場であると共に親しい仲間を得る場」という考え方を持っていて、「私生活の延長」であると考えていました。これが、職場での親しい人間関係になっていました。
     はっきりと言わなくてもわかってくれるという日本独特のコミュニケーションで組織が成り立っており、議論や討論は苦手であり、「全員一致」が当たり前のような不思議な社会です。

     新入社員の重要な仕事に、四月の花見の場所取りというのがありました。
     夜の宴会のために朝からゴザを抱えて場所を探し、買出しをして夜までその場所にたむろしていました。一番先に歌を歌わなければなりません。忘年会、新年会なども重要な行事です。
     欧米では集団と個が対立関係にありますから、人がなんと言おうと「私は好きなようにする」という生き方が歓迎されます。
     日本では「集団の中の自分」「みなからどう思われるか」「常識はずれではないか」「和を重視する」と考えて行くほうがうまくいきます。「私が○○する」という事は、なかなか難しいです。
     日本人は上司に対する「甘え」の意識が強く、個人的な相談もします。また、飲み会などの職場のイベントも「全員参加」が原則であり、また、「職場の活動に常に参画していたい」意識も強かったと思います。
     そのことが、戦後の日本型企業経営を支えてきたのですが、「バブル崩壊」を境に効率を優先するアメリカ型のマーケティング理論や「キャリア」とかの個人の自律を強調する風潮、さらに最近では「ヒルズ族」「勝ち組・負け組」といわれるような「マネーゲーム感覚の経営」がもてはやされるようになって来ました。
     その結果「企業自体のモラル」「職場内のコミュニケーション」が崩壊してしまったのです。
     原因は、ほかにも「教育制度」とか「家族」の問題が言われていますが、いずれにせよ日本人の特質が変化してきたのだと思います。

    このテキストを初めて書いたのは、2006年頃でした。当時と比べると、ずいぶん「成果主義・目標管理」などのアメリカ型経営は流行らなくなりました。日本型経営の良さが見直されてきたのだと思います。長時間労働による自殺の新聞記事などを見ますと、まだまだ・・・とは思いますが・・・。(2011年頃の記事)


    No.5 ダメな上司 

     会社員として働いた経験がある人なら、直属の上司を思い出すたびに、特別な感情がわいてくるのではないでしょうか。
     私自身も大変な思い出が数多くありますが、懐かしさや感謝の気持ちと共に思い出す上司もいれば、そうでない嫌な上司もいたのではないでしょうか。
    「やたら威張り散らして・・・。」「言うこととやることがちぐはぐで・・・。」「自分の自慢話ばっかり・・・。」

      この人のためなら・・・と思わせる上司にめぐり合うことは、本当に幸せだと思います。
    「そんなダメ上司がいる会社がつぶれないのは、自分のような優秀な部下が、歯を食いしばって、ダメ上司の欠点をカバーして、業務を滞りなく進めてきたからに他ならない。」と思っていませんでしたか。
     でも、よく考えてみると、この考え方はちょっとおかしいのです。
     すべての人にとって、自分が正当化されるように考えています。自分こそダメ上司と思う人はいません。ダメ上司の下で頑張った自己犠牲的な自分の姿しか思い浮かばないからです。
     あなたが苦しめられたダメ上司も、若い頃にはやはりダメ上司の下で頑張っていた可能性が高いです。

    優秀な部下がダメ上司に育つ

     ここに、マネジメントについての根本的な問題点が潜んでいます。
     先に結論から言いますと、管理職は指示・命令によって組織をコントロールしなければならない」という誤った信念がダメ上司を誕生させる原因です。
     指示・命令すればその通りに行動することが当たり前であって、その通りに動かないのがダメな部下であって、指示した上司がダメな上司だと言われても納得できないと思います。
    しかし、優秀な部下の立場で考えてみると、「指示された内容は、現場の実情を知らない。
     うまくいくはずがないのに・・・。」とか、「今頃、ピントはずれの指示をされても、聞くとバカらしい・・・。」とか、「細かいことばかりいって」という感情が、合理的な理性を押さえつけてしまいます。
     つまり、「管理する対象は人間である」という視点が抜けているのです。多くの人が、人間は本来合理的に動くはずだと考えています。
     成果や評価を求めたり、原因と結果を分析して合理的に行動すると考えています。これが間違いなのです。
     実は、人間はタテマエでは合理的に考えているように見せかけますが、ホンネの部分の感情、好き嫌いなどは人に見せません。
     人間とは合理的な存在ではなく、ドロドロした動物的・本能的な部分がはるかに大きく、本質的な部分です。
     企業経営や人事のシステムではこの部分を、無視しています。欠陥マネジメントだったのです。
     管理職は指示・命令によって組織をコントロールしなければならない」という誤った信念がダメ上司を誕生させます。管理してはいけなかったのです。


    部下が、指示・命令を聞かない要因

    次のようなことが考えられます。
    仕事に対する「やる気」、モチベーション
    仕事以外の悩みがあれば仕事に集中できないし、将来に対する不安があれば、「やる気」も出ません。
    指示された内容が理解できない
    内容自体が間違っていると判断していたり、必要ないと感じていたりします。
    知識、技術のスキルの違い
    できないことを指示されてもできないと思ってしまいます。「できない」という言葉は、よく考えると「やりたくない」という感情から出ています。
    上司に対する信頼感
    その指示が正しいと思っても、従いたくないという感情が芽生えます。そうすると行動の先延ばしとか、満足な結果を与えたくないという気持ちが起ります。最初から不可能な指示だとわかるのに、「いじめる」ために言っていると感じている。
     もちろん、ごく少数のエリートは存在します。
    ・ダメ上司をうまくあしらって、サポートして助ける。
    ・優秀な部下が優秀な上司になり、会社の経営を任されるような優秀な管理職に出世する。
    ・能力があるだけでなく、人柄もよく、誰からも好かれる人材。
    ・当初から「志」が違うと感じさせる優秀な部下。
     しかし、多数の優秀だったはずの部下がダメ上司になってしまいます。

     そこまで自分をわかっているはずの優秀な部下がダメ上司に育つのです。

    大人になりきれていない上司


    《余談》 自我状態の発育不全、つまり大人になりきれていない上司のタイプ

    ●上司に気に入られたいタイプ
     常に上を向き、上司の意向をそのまま受け入れ、伝えるだけ。上司の褒め言葉をもらうのが最大の喜びで、部下は自分のための道具としか考えていない。発想の時限が低く、上としたでは態度が豹変。部下はやる気を失ってしまう。

    ●逃げまくりタイプ
     責任を取らされないようにと言うのが最大の行動指針。失敗した時に自分の責任にならないように行動する。指示もころころ変わり、常にきょろきょろと落ち着かない。時には部下を平気で犠牲にする。一見気さくで良く喋る。保身が大事で仕事の成果は二の次になる。

    ●改革かぶれタイプ
     従来のやり方をすべて変えないと気がすまない。自分は能力があると勘違いしていて、指示はピントがずれている。
     かっこをつけたがり、部下は信頼しない。実は劣等感が強く、人に誉められることが大好き。組織は甚大な被害を受ける。

    ●無責任タイプ
     放任主義で、指示・命令はしない。部下に対しても無関心で、自分の殻に閉じこもりやすい。賢いふりだけはする。目標意識がなく、遊びになると張り切る。

    ●細かすぎるタイプ
     やたらと細かく、すべて自分の思い通りに行かないと気がすまない。うっとうしい存在。自分も部下もとにかく忙しい。時には陰湿ないじめをする。部下は単なる歯車。不安感が強い。

    ●叱責大好きタイプ
     ことあるごとに部下を罵倒、叱責する。指示命令を徹底し、できないと怒る。常にあら捜しをしている。
     部下が気に入らないと即左遷。独裁者になりたがる。劣等感のかたまり。アダルト・チルドレン。

     皆さんの近くにいそうなタイプは?


     優秀な部下がなぜ、ダメ上司に育つのか  


    自分の能力に自信がない場合


    ① 仕事の高度化、量の増加がストレスになる
     昔は、労働環境がストレスとなっていましたが、今は、仕事の内容、転勤・昇進・配置転換、重大な仕事の一任、経営不振などの“質“的な環境の変化によって発症のリスクが高まっています。
     次に仕事量増加・減少などの”仕事の量”などがストレス要因となっています。
     仕事の内容が変化しますから、環境の変化に対応することの不安が芽生えます。緊張感、各種のプレッシャーを感じます。
     出来事を「大変だ」と考えると、ストレスは大きくなり、「落ち着いて対処しよう」と考えると、ストレスは小さくなります。つまり、ストレスの受け止め方によって、ストレスは大きくもなり、小さくもなるといえます。

    ② 地位の圧力
     ヒラ社員から管理職に昇格すると、もちろん給料も上がりますが、肩書きが付きます。今までと違う「管理能力」を求められるようになります。仕事内容の質の変化、地位の圧力がストレスの最大要因となっています。
     後で詳しく説明しますが、地位・名誉に対する欲求、金銭的な欲求などの「外発的動機」が肥大化するのです。
     特に、金銭的欲求は限りがないもので、「塩水を飲むようなものだ。」という人がいます。「飲めば飲むほどのどが渇き、もっと欲しくなる。」顔つきが悪くなり、心のゆとりがなくなります。
     ヒラ社員の時は、仕事に対する興味も出てきて、ある程度自由に楽しく仕事をしていましたが、管理職になって、給料は上がっても自分の時間がない。結果・成果が求められ、その責任を負うことになります。自分だけの満足だけでなく、部下の指導育成の管理も求められます。
     今までまったく経験がなかったのですから、どうしていいかわかりません。

     私自身の経験ですが、本屋に沢山並べてある中のマネジメント関連本を購入し、勉強することになりました。しかし、テクニック的な言葉が多くて、役に立たない本が多いのです。
     「管理職は指示・命令によって組織をコントロールしなければならない」という考え方のハウツー本のほうが簡単ですし、本当に役に立つ精神論的な経営哲学の本もあるのですが、すぐに結果を求めたいものですから、そちらの本ばかりを買い集めてしまいます。思いつき、マネすることから始めました。

    ダメ上司のマネをする

     今まで、ダメ上司がしてきた事を部下に要求するようになります。俺もこうしてがまんしてきたのだから、お前たちもガンバレ・・・。「立場が変わると言う事が変わるのは当然のことなんだ」と自分を納得させます。
     管理する対象は人間であるし、管理する自分も人間なのです。
     心理学的に言いますと、ストレスを受けると、それまで隠れていた自分の今までの生き方、内面的な性格が出てきます。基本的な人間不信、対人恐怖の感情、わがままなどです。
     自分に自信がないという感情を持つ人間は、環境の変化に対する不安が強く、ダメ上司になってしまいますが、逆に自分に対して自信がありすぎる場合も問題が生じます。

    自分の能力に自信がある場合

     現代社会では、勉強をしていい学校に入り、いい企業に入って偉くなったり、起業したり、あるいは沢山お金をかせげる仕事についたりすることが、幼少の頃からの人生の目標のようになってしまっています。「勝ち組」になり、社会の上層部に属することがあこがれであり、良いことだと考えられています。
     この競争に勝ち抜くために努力しようと考える一部のエリート、頭がよく挫折を知らないエリートが管理職に出世した場合、実はこちらのほうが問題です。
     企業にとって大変な害があるダメ上司になります。会社の存続を危うくしてしまったり、社会的な事件を引き起こしたりします。

    ① 地位、肩書きの威力
     エリートに地位、肩書きを与えると、自分の存在や影響力、能力などを過大評価してしまいます。出身校、一流の企業に属しているだけで、能力があると過信しているのですから、関心が自分自身に集中し、自己中心的になり、自意識が過剰になります。
     独自のものの見方にこだわります。人の意見を聞かなくなってしまいます。客観的な視点が失われて、すべてを自分の利益に結び付けて発想してしまうのです。
    「損か得か」「メリットとデメリット」「合理的か非合理か」が判断基準となり、自分の思い通りに物事が進まないとイライラしてしまいます。頭が良すぎるのです。計算しすぎてしまいます。
    「自我の肥大化」もともと自我は、自分の体だけを支配するのではあきたらず、際限なく拡大しようとする欲望があります。なるべく多くの他人を自分の支配下に置こうとする性質を持っています。

    ② ワンマンの弊害
     いわゆるワンマンといわれる人たちは、自分の能力に自信がありますから、トップダウンですばやく行動することができます。スピードを要求される現代では、リスクを恐れず思い切った変革を実行できるメリットはあります。少々間違っていても、修正すればよいことで、何もしないことより良い場合もあります。
     しかし、自信過剰になりますと、すべてを自分の思い通りに動かしたくなってしまいます。部下は皆、自分の指示通りに動かなければならないと考えてしまうのです。そして、「なんで、こんなダメな部下ばかりなんだ。」と嘆きながら、ますます組織の支配に精を出すのです。実は自分自身の態度がダメな部下を仕立て上げていることに気がつきません。
     自分のやり方で組織を自由にコントロールしたい欲求が強くなり、部下の自我を抑圧してしまうのです。時には、人に命令されることを好む「依存」体質の人もいますが、その人は独立した自我が健全に発達していない病的な状態にあります。

     つまり、今までの合理主義的経営で考えられてきた常識的な組織形態は、上司の「自我の肥大化」を招き、部下は依存状態にあるか、無理をして「自我を抑圧」しているという、きわめていびつな構造になっています。

     やたらと自慢話をする社長、それを管理職たちは追従笑いを浮かべて神妙に聞く。彼らはそのとき、明らかに自我を抑圧しています。ところが同じ人物が、今度は自分の部下の前では、ワンパターンの自慢話をとうとうと垂れまくるのです。
     誰もが心の中では奇妙だと感じているのですが「これが社会なのだ」と自分自身を納得させ、自らもその組織の中に埋没していきます。抑圧された部下は、その抑圧の代償として実態以上にダメ上司に見えてしまい、後は酒場でダメ上司の悪口を言う。


    No.6 ホンネとタテマエを使い分け 


    「日本的マネジメント」では、ホンネトタテマエを使い分ける。割り切った考え方が賢いといわれます。日本では「本音」と「建前」を使い分けることが大切
     合理主義的マネジメントも、運用上は適当にポカして、組織をうまく運営しているというのが現状ではないでしょうか。「日本的マネジメント」の特徴は、そのうやむやな部分にありました。
     欧米人と日本人では、次のような心理的特性の違いがあります。
     欧米では集団と個が対立関係にありますから、人がなんと言おうと「私は好きなようにする」という生き方が歓迎されます。しかし日本では「集団の中の自分」「みなからどう思われるか」「常識はずれではないか」「和を重視する」と考えて行くほうがうまくいきます。「私が○○する」という事は、なかなか難しいです。
     こう言うと、反発される方も多いと思いますが、本当の自分を隠して生活するストレスは計り知れないもので、日本ではこの方法のほうがうまくいくのです。
    私自身の経験を紹介します
     大学を出てからインテリア家具会社に入社しルート営業として勤めましたが、その会社を辞めようと思った理由の一つが、ダメ上司の存在です。
       当時、30歳前後の営業本部長がいました。オーナー社長の娘婿であり、銀行マンから転職して入社し、3年も経たずにその仕事をしており、将来は社長になる予定と聞いていました。
    「なに、あいつは・・・。」と先輩社員はいつも陰口を叩いていたのですが、上司はいつもぺこぺこしています。現場を知らず時々営業所に来てピントはずれの指示を出しますが、上司はその通りに私たちに指示します。完全なイエスマンでした。
     ダメ営業本部長も本人は気が付いていないのでしょう。こんな会社はダメだ、自分がだめになると思いました。
     しかし、その会社はまだ存続しています。ダメ営業本部長が今では社長です。私の考えが間違っていたのでしょうか。ダメ上司でも、組織は正常に活動できるのです。
     今考えると、抑圧されている自分がいました。先輩の言っているグチがそのまま自分の意見でした。客観的な見方というよりも、会社に対する不平不満の一つが、その本部長をバカにすることで紛らわしていたのかもしれません。その程度の感情だったのだと、今は合理的に判断できます。

    No.7 自我の肥大 


     人間とは、矛盾に満ちた存在であり、頭で考えられるような合理的な存在ではありません。この人間の基本的特性を考えないような経営理論は役に立ちません。
     この基本的特性とは、人間は常にあるべき理想の自分と実際の自分にギャップがあるということです。
    何かに成功したり出世したりすると、人から評価され自信を持ちます。だから、評価されたいと、自分をよりよく見せたいと努力しています。そして、さらに高い目標を掲げて、自分を叱咤激励しています。
     それは、自分の心の中にある不安感や、劣等感、自信のなさを何とかごまかして自分自身が優れた存在であると信じたいからです。この劣等感が人が仕事を成し遂げる原動力になっていますから、決して悪いことではありません。
     企業の社長や管理職で能力のあるといわれている方は、エネルギッシュであり、前向きで力強く人を元気付けるような雰囲気を持っている人が多いと思います。なんともいえないギラついた圧迫感があり、私はちょっと苦手です。
     なぜかと問われるとうまく説明できないのですが、次に述べる「自我の肥大」を感じるからだと思います。
     つまり、能力のある人間は自分の存在や影響力、能力を過大評価してしまいます。これを「自我の肥大」といいます。
     関心が自分自身に集中し、自己中心的になり、自意識が過剰になり独自の見方にこだわるようになります。すべてを自分の利益に結び付けて発想し、思い通りにならないとイライラしてしまいます。
     口ぐせは、「なんでうちは、こんな能力のないやつばかりか・・・。」といつも部下を叱っています。実は自分自身の態度がダメな部下をつくっていることに気が付きません。
     もともと自我は、自分の体だけを支配するのではあきたらず、際限なく拡大しようとする欲望があります。なるべく多くの他人を自分の支配下に置こうとする性質を持っています。自分のやり方で組織を自由にコントロールしたい欲求が強くなり、部下の自我を抑圧してしまうのです。

    No.8 自我の特性 

     人間の基本的特性として、自我の肥大以外に次のような特性もあります。
  • 1 他人から管理されたり支配されたりすることを嫌う。
  • 2 自分以外のすべての外界や他人を基本的に嫌いである。
  • 3 自己中心的であり、物に執着する。

  •  自我が健全であるということは、自分自身のイメージが肯定的であり、実態とそれほど食い違っておらず、社会的に見ても健全なことをいいます。

     理想的な自分を具体的に言うと、
  • 1 自分は自分であると自覚している。
  • 2 この自分で良いという自己肯定感と自信がある。
  • 3 人から受け入れられているという安心感と
       社会にとって有用であるという自己肯定感がある。
  • 4 健全な自己愛と受容感がある。
  •  といえます。
     しかし、現実の自分は人間の基本的特性から逃れることがなかなかできず、自我の肥大を防ぐことが難しいです。
     では、どうすればよいのか。自分自身でもできないことを述べるのは心苦しいのですが、私自身が意識している「修行」を紹介します。


    No.9 内発的動機を意識する 

     努力して、頑張って目標を達成するというプロセスを目指すと、まず「目標」を設定しなければなりません。
     その目標は、理性と論理によって組み立てるもので、出来上がってくるものは、名誉欲であったり、金銭欲であったり、結局「自我の肥大」を招いてしまいます。
     目標を達成した自分が本来の自分であり、現在の自分はダメな自分ということになってしまいます。未来に対する不安感ばかりが大きくなり、安心感が保てません。
     ある人が、ヒルズ族といわれる人と話した時に、皆人相が悪いなと感じられたそうです。
    「もっともっと稼ぎたい」という欲望ばかりで、ゆとりというか人的な品格を感じないといわれていました。お金を欲しがることは、塩水を飲むようなものだといわれました。つまり、飲めば飲むほどのどが渇き、もっと欲しくなってしまうのだそうです。
    努力しない、頑張らない
    この言葉だけを聞くと、常識的におかしいといわれると思います。
     「努力するな、頑張るな」と言っているわけではないのです。この言葉のニュアンスに社会的な成功のために努力せよとか、勝つためにがんばれとか、「外発的動機」含まれるからです。

    今与えられている仕事を誠実に一生懸命勤める。
    毎日の生活を大切にする。


    「内発的動機」によって行動している時は、本人は、努力している意識とか、頑張っている意識は感じません。楽しいから仕事しています。その仕事に集中しているから疲れも感じません。その意味で、頑張らなくてもいいというのです。自我の肥大も起こりません。

    「努力しても、頑張ってもダメでした」と言い訳をする人に、頑張らなくてもいいよと言えばいやな顔をされます。
     しかし、「すべての成功は一つのアイデアから始まった」のです。
     外発的動機に基づいた努力、意志の力は役に立ちません。成功した人は「たまたま運が良かった。」「やりたいから、面白いから」というようなことを言います。本人は努力したと思っていません。
     客観的に観察することができるようになり、自分の気持ち「想い」と向き合って素直に自分を認めることで、自分の力で成長することができるようになるのではないでしょうか。


    No.10 インナーマネジメントとは 


    「インナーマネジメント」という言葉は、“自分の可能性を自律的に実現していこうとする内発的な動機を促す”という意味で使用しています。その内発的動機を、「気づく事によって、自由闊達で楽しい組織が創造できる」と考えます。

     図でわかるように「目に見えない部分」のマネジメントがないと、「目に見える部分」の管理をしてもうまくいかないという考え方です。その基礎部分には「仕事に対する誠意」が必要です。
     「成果、発展」という結果は、「個人の技術の向上、ノウハウの蓄積」と「楽しさ、働き甲斐」とそれぞれがリンクしています。このバランスが大切だと考えます。
     なお、仕事を単なる報酬を得るための手段と割り切っている人には、この理論は成り立ちません。
     実際に、サラリーマン生活をしてこられた皆さんは、この「ホンネの部分」は納得できるのではないでしょうか。
    「ダメな上司がいつも思いつきで、指示をする。なんとなくゴマかして、やり過ごしていると言うことが変わる。」「上司はいつも指示するだけで、自分がいつも尻拭いをさせられている。」とグチを言いながら部下は仕事をしています?!
    「インナーマネジメント」もベースには、アメリカ流の合理主義的経営がありますが、その合理性を超えた経営のコツがあります。
     合理的経営の欠陥部分を人間的な包容力で補い、タテマエとホンネをうまく使い分けて、うやむやにごまかしてきた部分こそ大切なものだったのです。
     人間的な情で組織が動いていた。これを「良くないこと」ではなくて、今後はそれを堂々と何の罪悪感もなく白日の下にさらして実行するのです。「上司の尻拭い」「やりすごし」などという一見しょうもない現象にこそ、日本的経営の強さがあったのです。
     たとえば、
    ・上司の指示・命令を自らの判断で優先順位をつけて遂行し、必要に応じて指示されないことも自主的に行って常に時機に応じた解決策を提示する。

    ・必要があれば指示されなくとも、実行して後で報告する。

     こんな部下がいる会社はいい会社です。どこかに上司に対する信頼感があります。事後報告を認めてくれるような安心感があるから、勝手に行動してしまう部下がいるのです。
     母親のひざの上の赤ちゃんは今まで知らなかった新奇のものに盛んに興味を示しますが、自分が守られて安全だと言う確信がもてない時は、既知のものにしか興味を示しません。
     一般に人は、自分の立場が安全だという確信が持てないと、新奇のものや高い目標に挑戦しなくなります。結果がわかっている平凡な仕事しかしなくなります。

     この「安心感」が大切です。
     いい会社は、この「安心感」を与えることのできる上司がいる会社です。
     成果主義による技能評価制度では、この「安心感」が保てません。目標管理・プロセス管理などでは、マネジメントが機能しなくなるのです。年功序列型賃金、終身雇用の制度、戦後の復興を支えた「日本型経営」にはこの「安心感」がありました。すべてが正しかったとは言いませんし、時代が違うといえばそれまでですが、日本人の特性にあった素晴らしい部分をもう一度再構築する時機が来たのではないかと思うのです。

     人間的な情で商売は成り立っています。

     「品質が良くて、優れた機能を備えていて、しかも値段が安い品物を作って売る。これは商売をやって儲けるためには当り前のことです。その点で同業他社に負けないように頑張らなければならない。それも当り前のことです。しかし、商売の究極は品物に人情をつけて売ることです。人情とは親切とか丁寧とかいうことです。品物に人情をつければ、儲かる商売ができます。手持ちの人情がなければ、せめて品物に笑顔をつけなはれ。笑顔に勝る人情はありません。」松下幸之助の言葉です。
     物を売るだけが商売ではなく、満足を与えるのが商売です。満足とは、感情です。
     品物を作る社員の心がヒット商品を生みます。
     そのベースは「企業風土」だと考えます。

     企業風土とは、その企業特有の倫理観や内部規律までも含んだ文化です。
     経営者の考え方が管理のシステムに影響を与え、その成功体験が歴史となって積み重なります。社是や社内マニュアルだけでなく、明文化されていない管理職の思考の傾向、社員の行動基準も含みます。ある企業では、リーダーに逆らうことはタブーであったり、ある会社では、会議で質問しなければ、無能であったりします。

     合理性を超えた経営のコツ

     人間性を考慮した、信頼感、安心感、共感を得られるマネジメント。
     それが「インナーマネジメント」なのです。
     企業のマネジメントもその構成員は人間なのですから、社員同士の感情の共有がなければうまくいきません。
     感情は、人から人へと心の垣根を越えていきます。
     そこに共感が生まれます。
     人生の喜び、感動は、人と人の共感のなかに生まれるものなのです。
     仕事は、私たちの人生の中で多くの時間を使います。その仕事によって私たちは生活し、生きる意味、やりがいを探しています。

     こうした視点の発想は、次の世代の職場のあり方を示唆しています。
     各自が最高の能力を発揮することを求めるなら、上からの指示や上司による指揮管理で効率を上げようとした従来のやり方は、リストラしなければなりません。
    「成果とか結果」を求めるのではなく、「各自の能力発揮」になります。
    社員教育も「教える」から「学ぶ」ことが目的になります。
     能力評価も従業員の長所短所ではなく、「どんな仕事をしてそれにどんな意味があるか」という質問に変わり、会社とは従業員一人ひとりが自分を開発していくことのできる「組織体」でなければならなくなります。
     そういった企業は、今まで企業よりはるかに「自由」であり、「やりがい、働きがい」を感じることができます。

     物を作る企業では、その物を作る人間の品質が商品の品質です。
     経営マネジメントとは、その最低部分の品質を向上させることだと思います。
     どんなに経営者が優秀でも、社員一人ひとりの意識付けができなければ品質は保てないのです。そして、それぞれの品質が向上すれば、指示・命令といったマネジメントは必要なくなるかもしれないのです。
     一人ひとりの内面的な能力を向上させる手法が「インナーマネジメント」です。


    No.11 インナーマネジメントの具体例 

    ・社内で、人事命令に依存しない「チーム」が自然発生し、以前は上司が担当していた職務の大半をこなしている。
    部門の垣根が低くなり、課長という仕事の内容が変化します。必要な時に、必要な人材を、必要なだけ投入したり、変化に応じて人員配置を変更したりすることが可能になります。
    ・以前は、品質の維持、評価に専門の検査機関が必要であったが、今では従業員たちが自分たちで品質をチェックしている。
    従業員一人ひとりの質が向上しますので、マニュアルによる管理が必要最小限です。大きなミス、失敗が少なくなり、状況の変化に臨機応変に対応できます。
    ・今では、上司が部下に査定されている。
    管理ではなく、対等の立場、部下のサポートになり管理のストレスが軽減します。部下の成長と成功を共に共感することができます。
    ・今では部品や材料・原料の納入業者が製造企業の組織の一部に組み込まれ、企画や決定まで参画している。
    多様な考え方を共有できるようになり、相乗効果が期待できます。グループとしての一体感を感じることで、楽しさ、やりがいを感じることができます。
    ・以前は中央集権で、二段階、三段階の許可が必要だった顧客サービス上の判断を、今では営業マンが自分の責任で行っている。
    従業員各自が、経営者的な感覚を身につけることができます。
     これが実現出来たら、ちょっとした革命ですね。
    楽しくなければ仕事ではありません。


    No.12 変化を嫌う 


     企業風土

     確かにあります。
     言葉で説明することは難しいですが、長年にわたって気づき上げられてきたもので、企業特有の倫理観や内部規律までも含んだ文化と言えます。
     これが、個人に与える影響は予想以上に大きいのです。これを変えることは本当に難しいと思います。
     以下の理由が考えられます。
    ①変化を起こさなければならない立場にある人たちは、自分自身がまず変わるという必要性を回避する傾向が強い。
     変化とは、「我々」が「彼ら」にやらせることであり、学習は「彼ら」がすべきことだと勘違いしている。>まず、自分が変わる。自分が変われば自分の周りにいる人々が変わり、周りが変われば組織が変わる。

    ②変化への抵抗は、自分自身に直接関わる身近な特定の変化ではなく、変化そのものに向けられることが多い。人は変化を嫌う。
     企業における変化は、通常は強制と評価によって推進されがちです。基準となるモデルがあり、このマニュアルに従って、「これをして、これをしてはいけない」と指示されます。
     これは結局効率が悪く、うまくいかないことが多いのです。過去の成功体験、経験も変化を阻害します。「今までこれでよかったのだから」と新しい技術を素直に評価しません。

    理性が邪魔している

     個人の行動を左右し、思考や感情の方向づけに大きな影響を与えながらも、本人には意識されない心理的過程を無意識といいます。
     人間が理性と論理で自分自身を十分にコントロールできるというのは、とんでもない錯覚です。実際には無意識からこみ上げてくる様々な衝動の支配下にあるといえます。
     しかし、まったく理性が働かない訳ではありません。理性が衝動をある程度ブレーキをかけています。これによって普通の社会生活が保たれていると言う人も多いと思います。
     私が述べたいのは、逆に、理性が邪魔している場合も多いという考え方です。
     物事には「大きな川の流れ」(シンクロニシティ)みたいなものがあり、その流れに従うことで、物事がトントン拍子に進むし、スムーズにうまくいく、そして、それを妨害するのが表面的に頭で考えた発想、合理性であり、「外発的動機」なのです。
     無意識は、私たちを良い方向に導いてくれると信じること。

     無意識に身をゆだね、何事も前向きにとらえる「積極的な思考」が大切です。
    ≪余談≫
     ゆがんだ目標

     健康的に達成動機が高く、失敗を恐れる気持ちが低ければ、人はちょうど良い目標を選べます。ところが、そうでないと、適切な目標を選ぶことができません。
     たとえば、実力はあるのに、いつも小さくなって遠慮して、低すぎる目標ばかり選ぶ人がいます。一方、ゆがんだ目標設定として、高すぎる目標を選んでしまうこともあります。
     私は、予備校の時、全く勉強しなくなり(パチンコは毎日暗くなるまでやっていました)、成績も悪くなりました。でも、プライドだけは高かったのです。成績は悪くても大学には行きたいと思っていました。そして、受験した大学は、絶対に合格できるわけのない偏差値の高い大学ばかりでした。
     どうして、そんなことをしたのでしょう。
     そういう大学なら、落ちても恥をかかないからです。
     プライドが傷つかないからです。
     心の中に、失敗への不安が大きくあり、その不安がそのまま外に現れると、低すぎる目標だけを選ぶようになります。不安があるからこそ、強がることがあります。そうすると、恥をかかないために、高すぎる目標だけを選びます。
     口では大きなことを言って、できもしない目標ばかり掲げて、結局失敗を繰り返す。そんな人間でした。

    【豊臣秀吉の言葉】
    「ワシは、太閤になろうなどとは思ったことがない。
    草履取りのときは草履取りを一心に努めたら、足軽に取り立てられた。
    ありがたいことだと一生懸命仕えたら、侍になった。
    侍の仕事に夢中になっていると、いつしか侍大将になっていたのだ。
    ついに姫路一城を拝領するにいたった。
    ワシは、一職をうれば一職、一冠を拝すれば一冠。
    その職官に没頭して今日に至ったのだ。
    ほかに出世の秘訣はなにもない。
    一職に忠実な者は、何事にも忠実だが、一職を軽視する者は、どんな地位におかれても不平を持つ。
    不満のあるものは成功しない。
    (高森顕徹、光に向かって100の花束より)


    No.13 インナーマネジメントのテーマ 

     テーマは、単に、人を管理することだけではなくて、人材育成、「会社の幹部、あてになる人材を作る」事です。

     この視点でマネジメントを考える必要があります。時間がかかりますし、効率も悪くなります。経営者は、企業の継続的な発展をさせることが大切ですから、この長期的な視点を持つ必要性があります。
     そのためには、経営者、管理職は自分自身の「心のエンジン」つまりモチベーションを上げ維持する必要があります。
     モチベーションとは自分自身がなりたい、やりたいと思う目標をやり遂げようとする心の衝動、心の底にある「内発的動機」であり「志」とも言います。
     自分のモチベーションをコントロールし、部下のモチベーションをサポートすることで「部下の自立」と「部下との深い信頼関係」を築くことができます。
     同時に大切なことが「企業風土」を作ることです。
     「人が育つ風土づくり」が企業にとっていちばん大切だと思います。水をまく前に土を耕す必要があります。人材を育てるためには、まずその土地を耕し、その人の心に種をまきます。水をまき、太陽の光を与える必要があります。しかも時間がかかります。
    「成果」と「ノウハウ」「楽しさ」はそれぞれにリンクしています。その一つだけ、「成果」ばかりを評価してしまうと、いびつな三角形ができてしまうのです


    (1)あてになる人材を作る 

    今までの合理的な「頭でっかち」のマネジメント
    目に見える部分
    意識と無意識の境目
    目に見えない部分
     この部分の教育が少ないのでは、知識や技術などが身につかない。頭でっかちになる。これでは成果が得られない。

    目に見える部分
    意識と無意識の境目
    目に見えない部分
     これからのマネジメントはこの部分の教育が前提になる。
     =インナーマネジメント

     今までの一般的なマネジメントは、目標管理やプロセス管理など、主要なテーマが知識や技能に対する教育を重視し、人間的な思い・価値観など、二次的なテーマとして「やる気」や「働き甲斐」などのマネジメントはおこなわれていませんでした。
     その結果、理論的な「頭でっかち」のマネジメントになり、こうしろ、ああしろといった上からの指示命令が多くなってしまいます。これでは成果を出すことはできません。
     ・仕事に喜びを感じられなければ、お客様にも喜んでもらえません。
     ・どんなに知識や技能を持っていても、それらを使うのは人です。

     「人が育つ風土づくり」が企業にとっていちばん大切だと思います。花(個人)に水をまく前に土(社内環境)を耕す必要があります。
     同時に大切なことが「企業風土」を作ることです。
     「人が育つ風土づくり」が企業にとっていちばん大切だと思います。水をまく前に土を耕す必要があります。人材を育てるためには、まずその土地を耕し、その人の心に種をまきます。水をまき、太陽の光を与える必要があります。しかも時間がかかります。
     人材を育てるためには、まずその土地を耕し、次にその人の心に種をまきます。そして水をまき、太陽の光を十分に与える必要があります。急いではいけません。  具体的には、自律的なキャリア形成のためのヒューマン教育、自己理解を中心に自分を見つめなおし、「気づき」を体験させます。自分に気づき自ら行動することで、自分の新しい可能性を発見することになります。


    (2)自由闊達な企業風土を作る 

     花を育てるためには、種を蒔く前にまずその土地を耕す必要があります。そして、種をまきます。水をかけて、太陽の光を与える必要があります。土地を耕すことが、「企業風土」を作ることです。
     具体的には、次のような職場環境だったらどうでしょうか。
    ●上司の指示が違うと思ったら、各自の責任のもとに無視しろ
     上司を上司とも思わない態度がいいというのではありません。本気で議論する雰囲気です。自分の意見を述べることができるというのは、素晴らしいと思いませんか。
    ●当然必要と思ったら、指示がなくても実行しろ
     ここには、自由に発想し、自由に行動する部下と、その部下を包容する上司との信頼関係がベースにあります。上司の人間性が問われます。
     最も大切なことは、部下の成長であり、企業にとっては「あてになる人材」の育成ですから、結果が裏目に出たりしても、決してとがめてはいけないのです。もし、部下が真剣に取り組んでいて、自らの責任において体を張って指示を無視したなら、それは結果の如何に関わらず、賞賛すべき勇気ある行動であり、その過程で、部下は成長します。
    ●小さな失敗は怒っても、大きな失敗は怒らない
    本人がいちばん知っています。失敗して学ぶことが本人の成長を促します。「なぜ失敗したか」を追及しても、結果は変わりません。「どうしたら、失敗しないようにできるか」を考えるべきなのです。

     かつての日本企業は、短期的な業績よりも長期的な企業の成長に重きを置いており、たとえば幹部候補生には、仕事のローテーションがありました。より高いポジションについたときに全体の業務を把握させるためにいろいろな業務を経験させます。このシステムは現在の仕事の効率を下げます。
     もし効率だけを考えるならば、優秀な人は一つの仕事に専念したほうがいいし、より難易度が高い仕事のみを担当させたほうが良い。人間が頭で考えて合理性を追求するとそういう結論になります。
     この「安心感」が大切です。
    いい会社は、この「安心感」を与えることのできる上司がいる会社です。企業風土を創り上げるのは、人なのです。
  • 上司の指示・命令を自らの判断で優先順位をつけて遂行し、必要に応じて指示されないことも自主的に行って常に時機に応じた解決策を提示する。
  • 必要があれば指示されなくとも、実行して後で報告する。
  •  こんな部下がいる会社はいい会社です。どこかに上司に対する信頼感があります。事後報告を認めてくれるような安心感があるから、勝手に行動してしまう部下がいるのです。

    (3)モチベーションを保つ 

     目標へ向かわせようとする内的過程、つまり、「やる気」「達成意欲」をモチベーションといいますが、これは3つの部分からなっています。
    「内発的動機」と「誘因」そして「楽しさ」です。
     行動の原因となる生活体内部の「内発的動機」とは、つまり「心のエンジン」です。そして、目標や成果が「誘因」です。
     この内発的動機と誘因と楽しさのコンビネーションが、モチベーションを作ります。
     モチベーションとはh3自分自身がなりたい、やりたいと思う目標をやり遂げようとする心の衝動「内発的動機」です。それには、「心のエンジン」と同様に、目標が明確に意識されていることが重要です。

     目標というのは別に数字を上げることや、出世すること「外発的動機」ではありません。自分がなりたい未来の姿をイメージすることです。
     そしてその姿の自分を強く信じることで、そこに向かおうとする内なるパワーが湧き上がります。これこそがモチベーションです。
     管理職の皆さんの内なるパワーはどうなっていますか?
     未来の姿はしっかりイメージされていますか?
     まずは自分のモチベーション状態をしっかり把握しましょう。良い状態ならそれを維持し、下がっていたら心のエンジンをかけなおして、上げることが重要です。自分のモチベーションが良い状態で保たれてこそ、部下のモチベーションをサポートし、部下を活き活きさせることができるのです。

    自分自身のモチベーションを上げ、維持すること
    そのためには、次の二つがポイントです。
    ① 現在の仕事の水準を自分で上げて、より大きなチャレンジ性を持たせる。
     この場合は、目標が明確に意識されていますから、次の目標、次の段階と自分のモチベーションを高めることができます。
    ② 実際にはそこまで要求されていないけれども、何か細かいことに注意を注ぎこむ対象を自分で設定する。
     簡単で易しすぎる「ルーティンワーク」の場合は、すぐに慣れてしまい「飽き」がきてしまいます。
     JR山手線は、約1時間で、外回りと内回りを一周するそうですが、ある人がその山手線の運転手さんに「毎日同じ場所をぐるぐる回るだけで、あきませんか?」と質問したそうです。
    「とんでもない、時間帯、季節によって乗っている乗客の数も違うし、ブレーキの掛け方、タイミングなど同じ状態のことはありません。私たちはプロとして、安全に安定した運行を心がけなければなりませんから、一瞬たりとも気が抜けないのです。時刻表と1分も違わず、同じ停車位置に10センチの狂いもなく停車することがいかに難しいか、わかりますか。あきる暇などありません。」と山手線の運転手さんは答えられたそうです。
     難しいこと難しそうと思わせず、簡単に見せるのがプロです。素人である私たちには、退屈なように見えてしまうのかもしれません。私たちが毎日当たり前のようにバスや電車に乗って通勤して会社にいけるのは、このプロの仕事のおかげなのです。
     このプロ意識は「自分で作り耕す」必要があります。先輩社員から話を聞いても、研修で「なるほど」と思っても、自分で仕事に対する誇りがなければ、前向きに取り組もうという気持ちにはなれませんし、目標がなければ心を耕そうとは思いません。
     日々の業務の中で、プロはこのようにして自分のモチベーションを保っています。
     プロとしての毎日の行為は、お客に満足してもらおうとする平素からの心がけの現れであり、仕事に対する誠意の現れだからです。

     この世の中に「雑用」という用はない。私たちが用を雑にした時に、雑用が生まれる。
     この世につまらない仕事はありません。



    No.14 自我の肥大をふせぐ 


     人間とは、矛盾に満ちた存在であり、頭で考えられるような合理的な存在ではありません。この人間の特性を考えないような経営理論は役に立ちません。
     この基本的特性とは、人間は常にあるべき理想の自分と実際の自分にギャップがあるということです。

     何かに成功したり出世したりすると、人から評価され自信を持ちます。だから、評価されたいと、自分をよりよく見せたいと努力しています。そして、さらに高い目標を掲げて、自分を叱咤激励しているのです。
     それは、自分の心の中にある不安感や、劣等感、自信のなさを何とかごまかして自分自身が優れた存在であると信じたいからです。この劣等感が人が仕事を成し遂げる原動力になっていますから、決して悪いことではありません。
     企業の社長や管理職で能力のあるといわれている方は、エネルギッシュであり、前向きで力強く人を元気付けるような雰囲気を持っている人が多いと思います。なんともいえないギラついた圧迫感があり、私はちょっと苦手です。
     なぜかと問われるとうまく説明できないのですが、次に述べる「自我の肥大」を感じるからだと思います。
     つまり、能力のある人間は自分の存在や影響力、能力を過大評価してしまいます。これを「自我の肥大」といいます。関心が自分自身に集中し、自己中心的になり、自意識が過剰になり独自の見方にこだわるようになります。すべてのを自分の利益に結び付けて発想し、思い通りにならないとイライラしてしまいます。
     口ぐせは、「なんでうちは、こんな能力のないやつばかりか・・・。」といつも部下を叱っています。実は自分自身の態度がダメな部下をつくっていることに気が付きません。  もともと自我は、自分の体だけを支配するのではあきたらず、際限なく拡大しようとする欲望があります。なるべく多くの他人を自分の支配下に置こうとする性質を持っています。


    (1)自我の特性 

     人間の基本的特性として、自我の肥大以外に次のような特性もあります。
  • 1 他人から管理されたり支配されたりすることを嫌う。
  • 2 自分以外のすべての外界や他人を基本的に嫌いである。
  • 3 自己中心的であり、物に執着する。
  •  自我が健全であるということは、自分自身のイメージが肯定的であり、実態とそれほど食い違っておらず、社会的に見ても健全なことをいいます。自尊感情といったり、アイデンティテーの確立といったりします。
    理想的な自分を具体的に言うと、
  • 1 自分は自分であると自覚している。
  • 2 この自分で良いという自己肯定感と自信がある。
  • 3 人から受け入れられているという安心感と、社会にとって有用であるという自己肯定感がある。
  • 4 健全な自己愛と受容感がある。
  •  しかし、現実の自分は、人間の基本的特性から逃れることがなかなかできず、自我の肥大を防ぐことが難しいものです。  では、どうすればよいのか。自分自身でもできないことを述べるのは心苦しいのですが、私自身が意識している「修行」を紹介します。


    (2)「外発的動機」より「内発的動機」を意識する 

     努力して、頑張って目標を達成するというプロセスを目指すと、まず「目標」を設定しなければなりません。その目標は、理性と論理によって組み立てるもので、出来上がってくるものは、名誉欲であったり、金銭欲であったり、結局「自我の肥大」を招いてしまいます。
      目標を達成した自分が本来の自分であり、現在の自分はダメな自分ということになってしまいます。未来に対する不安感ばかりが大きくなり、安心感が保てません。
     ある人が、ヒルズ族といわれる人と話した時に、皆人相が悪いなと感じられたそうです。「もっともっと稼ぎたい。」という欲望ばかりで、ゆとりというか人的な品格を感じないといわれていました。お金を欲しがることは、塩水を飲むようなものだといわれました。つまり、飲めば飲むほどのどが渇き、もっと欲しくなってしまうのだそうです。
     「一隅照曜」と言う言葉があります。これが私の目標です。部屋の隅っこのほうでもいいから、自分の光で照らすことができる自分になりたいということです。
     内面的動機であり、これを「修行」したいと考えています。
     今与えられている仕事を誠実に一生懸命勤める。毎日の生活を大切にする。
     これだけです。
     「Planned Happenstance Theory」 ”計画された偶然理論”で言われているように「キャリアというものは、あらかじめ“この仕事こそ自分にもっとも適した仕事だ”と意思決定して仕事を選ぶというより、仕事の中で直面する困難や成功や出会いなどから学習することによって変化しつくられていくものなのだ」ということを信じています。
     また、トランスパーソナル心理学で言われているように、他の人の幸福を中心に生きられれば、自分も幸福になるという考え方を大切にしています。


    (3)努力しない、頑張らない 

     この言葉だけを聞くと、常識的におかしいといわれると思います。
     「努力するな、頑張るな」と言っているわけではないのです。この言葉には、社会的な成功のために努力せよとか、勝つためにがんばれとか、「外発的動機」含まれるからです。
     「内発的動機」によって行動している時は、本人は、努力している意識とか、頑張っている意識は感じません。楽しいから仕事している。その仕事に集中しているから疲れも感じません。
     その意味で、頑張らなくてもいいというのです。自我の肥大も起こりません。
    「努力しても、頑張ってもダメでした。」と言い訳をする人に、頑張らなくてもいいよと言えばいやな顔をされます。しかし、「すべての成功は一つのアイデアから始まった」のです。
     努力、意志の力は役に立ちません。直感は一見不合理のような形であなたをガイドします。
     潜在意識は、いつもあなたのためを思って働きます。
     客観的に観察することができるようになり、自分の気持ち「想い」と向き合って素直に自分を認めることで、自分の力で成長することができるようになるのではないでしょうか。
     以前に述べたフロー理論を使うのです。確かな満足感と、生活に楽しさを与えます。フロー状態で集中し、夢中になっていると、確かなものをつかみ、本当のものに出会ったときに感じる、確固たる感情がでてきます。


    (4)頭で考えず、感じる 

     注意が強く集中しているので、その行為と無関係のことを考えたり、あれこれ悩むことに注意を割かれることもない。そのため、自意識は消え時間の感覚はゆがめられます。
     このような経験を産む活動は非常に楽しいので、人々はそこから得られる利益についてほとんど考えることなく、それ自体のためにその活動を自ら進んで行うようになります。
    自分の知覚と選択を信頼することです。
     偶然は必然であり、今感じている苦難も、人生にとって意味のあることですから、前向きに受容して、取り組むと、「意味のある偶然の一致」によってそれを乗り越えることができます。
     考えても、いいアイデアは浮かびません。感じるのです。
     自分はどう感じるのか。それが実現すればどう思うのか。思い「気づき」を大切にします。


    (5)指示命令をせず評価もしない 

     話をマネジメントに戻しますと、その目的は「あてになる」人材を育てることですから、元気のある会社の例で述べたように、レベル3の人材を作ることです。

     自分で課題を見つけて、せっせと勉強しています。この人については、会社は自由にやらせています。いつ、どこで誰に出会うかもしれませんし、本人は楽しみながら勉強していますから、時間とお金を与えています。
     もちろん放任するわけではありません。危機的状況や変化が必要なときは、リーダーシップを発揮します。
     効率をある程度我慢して、人材育成をするために本人に任せるのです。下に権限を委譲して自由に仕事をやらせ、責任は自分が取る。
     この事によって、自分よりも優秀な部下が活躍することができます。自由闊達な企業風土が生まれます。
     管理型のマネジメントでは、管理職の能力で、チーム全体の能力が決まってしまいます。個人個人の能力は押されこまれてしまいます。
     管理するのではなくて、受容し、信頼し、任せるのであり、サポートする意識が大切だと思います。このことによって、長期的な視点で会社の発展と継続が計れます。チームが一丸となって自律的に目標に向かって燃えるようになります。

     評価はどうしてもマイナスの言葉になります。
     相手をダメと言う時、言っている自分は、自我の肥大が起ります。つまり、自分を正当化しないと他人を評価できないからです。自己弁護、自己の正当化が前提となってしまうのです。
     プラスの言葉は人を勇気づけたり明るくしたり幸せにしたりしますが、マイナスの言葉は暗くしたり嫌な思いをさせたり落胆させたり、心に傷を負わせて自殺まで追い込むことさえあります。人間が不幸に陥る原因はマイナスの言葉を不用意に使うからです。
    →交流分析、「ストローク理論」より


    (6)楽しくなければ仕事ではない 

      「どんな時に、仕事を楽しく感じるか。」という質問に対する答えです。

    ・ 仕事に熱中している時
    ・ 喜ばせたい人のために何かをするとき、活動しているとき
    ・ 同僚たちといい関係のとき
    ・ チーム全体が共通の目的に向かって働いているとき
    ・ 自分が組織に大きな貢献をしていると自覚できるとき
    ・ プレッシゃーからではなく、自分の選択で動いているとき
    ・ 自分がいましている仕事が好きなとき

    逆に「どんな時に仕事がいやになりますか」という質問の答えです。

    ・ 同僚と摩擦が起きているとき
    ・ 能力以上の仕事をしなければならないとき
    ・ 時間が足りなくて、質的に満足できる仕事ができないとき
    ・ 明白な理由もなくやり方の変更を指示されたとき
    ・ ルーティンワークばかりで学ぶべきものがないとき
    ・ 周囲が自分の言動を逐一査定、評価していると感じるとき
    ・ 何をやっていいかわからなくて、やる気をなくしたとき
    ・ 自分の時間を仕事にとられすぎたとき
    ・ 周囲から信頼されないとき

     私たちは、仕事をしている時の感情が仕事の結果に関係があるとは考えないし、またそれが重要であるとも考えてきませんでした。仕事の喜びを意識することと能力を発揮すること、成果を上げることは互いにリンクしています。
     この関係を意識することが、「インナーマネジメント」の原則です。


    No.15 仕事に集中する 


    インナーマネジメントの実践 ・・・心理学の活用

     自由闊達な職場の雰囲気を造り、社員各自のモチベーションを向上させるマネジメントの考え方を述べてきました。では実際に効果を上げるにはどうすればよいか、具体例を挙げて説明します。

    (1)「知覚」に集中する

    興味をもち、知りたいなと思うこと。
     集中するとは、何であれ現在していることに注意を向けてそこに焦点を絞り込むことです。人間はあらゆる行動でこの能力を駆使しています。
     この練習をするときに一番大切なことは、強制しないことです。集中は興味から生まれますから、強制ではなく、導くというスタンスが大切なのです。
     次に大切なことは、評価しないことです。良いとか悪いとか主観的な批評をすることは、集中への大きな障害になります。
     その事柄に集中しようと自分自身に命じるのではなく、そのことを知りたいと思う姿勢が大切なのです。
     また、何が集中を妨げているのかに「気づく」ことも大切です。何が妨害しているかに気づくだけで、集中を復元することができます。集中力が増すことによって、自己妨害が減り「フロー」の状態に入ることができます。
     AT&T社の電話オペレータの対応改善では「顧客の声」に集中しました。
     職場でのストレスや退屈さを減らし、楽しさを増すような研修として、「退屈しない方法、ストレスを感じない方法、8時間の就業時間中に楽しみを見つける方法を考えましょう。」とオペレータが行っている実際の作業そのものに注目しました。
     そして、利用者の声の情報に「温かさ」「親しさ」「苛立ち」などを感じ取り、異なる声でさまざまな個性を表現してみると、そりが利用者の心理に大きな影響を与えるだけでなく、自分自身も影響されることがオペレータにも分かってきます。自分の声が自分に影響するのです。
     この知覚練習で、オペレータ自身のストレスを大きく減少させました。

    この方法は、いろんな場合に応用できます。

    ●かたちに集中
     有名なプロのテニスプレイヤーは、ゲームでサーブをする前に、テニスボールをじっと見つめるのだそうです。ボールの縫い目の部分は一つひとつ微妙に形が違うそうでそれぞれの表情が違うのだそうです。すると、なぜか落ち着くのです。
     「知覚」を集中することによって余分なセルフ1の活動を押さえ、よこしまな考えを防ぎ、プレーそのものに集中することができます。

    ●数字に集中
     量るだけダイエットというのがあります。毎日、決まった時間に自分の体重を量り、グラフに書き込むだけでよいのです。それでやせることができるといいます。別に食事の制限をしたり運動をしたりする必要がないとの事でした。実際にその数字に集中してみますと、どんな時に体重が増え、どんな時にやせるかがわかります。そして、体重が少しでも減るとうれしいのです。

    ●位置に集中
     あるバス会社の研修で、プロのドライバーであるバスの運転手さんに提案してみました。
    「プロですから、意識すれば決まった場所に10cmの誤差もなく停車することができますよね。どうですか。」「うーむ、できるかもしれない。」
     なぜ、私がこの提案をしたかというと、停車位置に意識を集中することで、急発進、急停車などの乱暴な運転がなくなるからです。運転技術の向上、ゲームと考えれば楽しくなります。無理のないブレーキのかけかたが身につくのではと思います。

    ●時間に集中
     バスの運転手に「定時運行を心がけなさい」と言っても、時間や状況の変化により、そもそも無理であると考えてしまいます。そこで、時間に集中するのです。遅れたからどうだと決して評価をしないのです。ただ、グラフを作り、何分早かったか、遅かったかを記入させるのです。それだけでいいのです。少なくとも「定時運行」を意識しますから、結果は予想できます。


    (2)「どうしているか」に集中する 

     ただ、客観的に観察し続けてみるのです。そうすれば「気づく」事ができます。気づいている自分に気づくことができます。
     バス停に立って、バスが止まり発車することの繰り返しを一時間ほど観察したことがあります。いろんな人がいろんな表情で乗車したり降車したりしています。バスを観察していますといろんなことが解ります。
     「バスはどう動いているか」という動きに集中してみたのです
     停車するスピード、ドアの開くタイミング、運転手の声、ドアの閉まるタイミング、発車するスピードなど、一台一台微妙に違います。「快適」なイメージや、「気ぜわしい」イメージ、「怖い」感じ、「ゆったりした」感じなど、感じるのです。
     どれが一番いいのか、観察すればわかります。私が感じることができたのですから、そのバスに乗っている乗客も感じることができるはずですし、実際に感じています。

     なぜ私がこんなことをしたかというと、あるバス会社のプロのドライバーの接客マナー向上の研修を頼まれたことがきっかけです。一日3時間のスケジュールで20名ほどの運転手さんに、講義をして欲しいと頼まれました。
     私の研修以前に、外部調査をおこなっており、各運転手ごとに細かくチェックをしていて、点数で順位をつけてありました。その結果、成績の悪い人を対象とした研修で、「先生、厳しく指導してください。」といわれました。
     私が講義した内容は、その主旨とはちょっと違っていましたので、変な顔をされていました。「プロの笑顔とコミュニケーションの心理学」というテーマで話しました。
     マネジメントの前提となる「仕事に対する誠意」の部分、土台の部分について話しました。
     結果、管理職の方の意向とは逆の研修をしてしまいました。研修を受けた方々には、とっても評判が良かったのですが・・・。
     そして、次の研修はボツになりました。(笑)
     管理職は成績を明らかにして、社員を処分したかったのです。評価によって叱責することが自分の仕事だと思っていました。どうやら意向に反した研修をしてしまったようです



    (3)「インナーマネジメント」を使う 

     研修の話の続きです。
     まず私は「どうしろ」(=接客態度の向上)ということよりも、「どうしているか」を知りたいと思いました。他社の運転手を含めて、現状を知りたいと思いました。
     そこで、バス停に立って、バスが止まり発車することの繰り返しを一時間ほど観察したのです。
     種明かしをする前に、心理学で有名なホーソン実験を紹介します。
     ホーソン実験は、シカゴにあるウエスタン・エレクトリック会社のホーソン工場で1927年の春から本格的に行われるようになった実験ですが、 特別な目的があったわけではありませんでした。

    ①照明実験→ 照明が労働者の生産性にどう影響を及ぼすか。(労働環境)
     この実験は照明と作業能率との関係に関するもので3期に分けて実施されましたが、その結果からは、照明と作業能率との間に特定の問題を見出すことはできませんでした。
     「単純な実験からは、単純な結果が出る。明かりが多くなれば、業績は良くなる。つまり、明かりが増えるほど生産性もあがった。」しかし、照明を元の明るさに戻しても、生産性は落ちなかったのです。

    ②リレー組み立て実験→中休みの影響を調べようとした。(労働時間等の物理的条件)
     この実験は、リレー(継電器)の組立作業について、選ばれた女性がおよそ35の小部品を組み上げていくというもので、テストルームの温度や湿度、彼女たちの健康状態、休憩の回数や時間など様々な物理的条件がテストされました。
     実験の最初の1年半ぐらいの間は、作業条件の改善に従って生産能率の上昇がみられたのですが、その後にある実験担当者の提案により作業条件を元に戻したところ、依然として生産性の上昇がみられました。

    ③面接実験
     実験の当初においては、質問形式の面接が試みられていました。しかし、このような面接方式は役に立たないことが明らかになり、労働者に自由に語らせる方式がとられるようになりました。

    この面接実験の結果明らかになったことは、
     ①労働者の行動をその感情から切り離して理解しえないこと。
     ②感情が容易に偽装されるものであること、したがって、これを認識したり研究したりすることは、はなはだ困難であるということ。
     ③感情の表現がそれのみによってでなく、その人間の全体的情況に照して初めて理解されうるものであること。
    だそうです。

     わかりやすく言うと、実験に進んで参加したという意識、自分たちは選ばれたエリートであるという意識が、「何か新しいことにチャレンジしよう」という意識になり、職場の人間関係が良くなって30%生産性を上げる結果になったものだと考えられるのです。

    この結果のポイントは、
      ①実験である。期間が限定している。
      ②常に注目を集めている。
      ③自分が意識している。

    ということです。


    (4)「接客マナー向上」の方法 

     インナーマネジメントの考え方を使いました。

     ① プロのドライバーに、以前に外部調査による「接客マナー」の調査を行ったが、2回目の調査を何時から何時までの間に行うことを宣言します。調査をする部署を明らかにします。
     以前の点数の明示はしませんし、誰を何時するかも言いません。いやな雰囲気が漂います。
     一週間ぐらいの期間を限定します。ランダムに抽出して、秘密に行うことを明示します。
    「この営業所の評価がかかっているから、この期間だけでも協力して欲しい。」と言います。

    【期間限定の実験である。注目されている。】

     ②そして、非公式に、「だれかが」調査の日時を運転手にもらすのです。噂を流すか、こそっと話します。「今日の午後だけ、気をつけてね」と言います。一人に漏らすと、全員に日程が漏れるようになるともっといいと思います。

    【自分が意識している。】

     ③そして、いかにもと思われる調査員が、バスに乗り込み調査をします。運転手は気づきますから、「接客マナー」は向上します。実際に調査もします。

     ④また、噂を流します。「また、何時何時するらしいよ。」今度はデータを示さず、「午前か午後かわからない。」というのです。

     ⑤今度は、指定した日時と違う時間に調査します。

     何が起こるのでしょう。読者は、想像できるのではと思います。
     期間を限定することで、集中力が維持できます。一度意識して、できるようになったことは、繰り返すことで意識しなくてもできるようになります。
     大切なことがあります。
     「指定した日時以外にも調査したらしいよ。」と打ち明けます。
     そして、皆の前で向上した運転手を表彰するのです。できるだけ盛大に、できれば社長自ら「感動の言葉」を述べます。
     「お客様から、こんな感動的な言葉をいただいた。私は誇りに思う・・・。」というような言葉です。

       インナーマネジメントとは、「気づき」を促し各自の内発的動機を高めることによって、
     自由闊達で楽しい組織を創ることです。
     人に認められると、感動します。
     感動が能力を引き出します。


    定期的に実験を行うだけで、「接客マナー向上」が可能になります。試してみる価値はあると思いませんか。

    「なんか納得できないな。」と感じませんか。
     成果主義の弊害とか、自由闊達な企業風土を作る、指示命令をせず評価もしないことが大切だとか立派なことを言っておきながら、実際に書いてあることは、人間の心理をうまく利用して管理する方法ではないかと思いませんか。
     もともと、インナーマネジメントを直訳すると、「内面的に管理する方法」といえるかもしれません。ですから、「ベースには、アメリカ流の合理主義的経営がありますが、その合理性を超えた経営のコツがあります。」と書いたのです。
     ただ、管理されているほうには、管理されているという感覚はありません。
     そこに楽しみと喜びとやりがい、働き甲斐があるからです。


    (5)「楽しい」に集中する 

     元自動車販売会社の営業所長の話ですが、彼はこの「楽しさ」に焦点をあてました。
    「これからの四半期はノルマを課さない。」
    「もちろん販売活動は続けてもらうが、具体的にいくら売上を伸ばしたかの報告はしなくても良い。その代わり、楽しく売ってほしい」と呼びかけました。具体的には、仕事中の気分を自己採点して、喜びあふれる状態を10、最低を1として、自分なりの「喜び点数の改善目標」を設定せよというものでした。
     次に開いた販売会議で、販売担当者として自分の仕事を楽しむために何をしたかを話し合いました。その時点で彼らは「何が喜びを得ることの障害であったか」について気がついたのです。それは、失敗への恐怖であったり、ルーティンワークだったり、自分を追い込みすぎたのが原因だと報告した者もいました。
     ところが、四半期が終わる頃になって、所長だけでなく販売チーム全員が仰天してしまいました。チームは全社でトップの販売成績を上げていたのです。
     変化したのは販売実績だけでなく、チームの平均接客数は変わらなかったが、平均時間が25%の減少、その他の事務作業時間も30%減っていた。『顧客との人間関係は逆に密になった』と彼らは報告しました。
     以前より、リラックスして顧客に対応できるようになり、それによって顧客もリラックスして自分たちの悩みや要望を販売員に気楽に話してくれるようになったというのです。顧客は販売員のアドバイスも素直に受け取ってくれるようになり、販売員はそれぞれ、売上は伸びているとは感じていましたが、それは自分だけの偶然であろうと感じていました。
     チーム全体の四半期の収益が30%もアップしてしまったのです。
     喜びが能力の発揮にリンクし、成果にリンクしていたのです。
    「自分は楽しく仕事をする」という姿勢で、仕事の結果とは区別してみたらどうでしょうか。もちろん周囲に嫌なことが起きたり、組織が官僚的で動かなかったり、自分ではどうすることもできない原因が存在することは、確かですが、仕事を楽しむと決意することで、何かを得ることができると確信しています。

    ありがとう
    「ありがとう」の言葉は、魔法の言葉といわれています。言われた者だけでなく言った方も気持ちが良くなります。究極のコミュニケーションといわれるゆえんです。
     自分の仕事に対する見返りとして、この「ありがとう」の言葉に集中してみると何かが変わります。
    「今日は何回、ありがとうの言葉を言ったか。」
    「何人のお客様から言われたか。」
     これを観察してみるのです。
     そうすると一日一日が新鮮なものに見えてきます。毎日楽しいことばかりはありません。辛いことも多いのですが、今日一日のことだけを考えて、「ありがとう」の言葉が言えるかどうかを自分を観察してみるのです。

    成功する
     成功のアイデアにめぐり合うためには、「好奇心を旺盛にすること、できることはどんどん変えてみること」というポジティブシンキングが必要です。
     目標は必要ありません。
     考え続けるのです。
     成功を研究しても成功にはなりません。成功するということは、他人よりも上位の地位に付きたいと思っているのですが、これを他人と同じような人間になることで達成したいと考えていては不可能です。他人の経験は参考にならないのですが、新しいアイデアとは、新しい場所に置かれた古いアイデアなのですから、そのアイデアを組み合わせたりして試行錯誤することで何かが生まれるかもしれません。

     ある事柄が完璧だと決め込んだら、その事柄はそれ以上良くなりません。その完璧以上の素晴らしさにチャレンジして失敗しても、完璧以下にはならないのだから、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

    思いついたら試してみる。
    この方法しか新しいアイデアを思いつく方法はありません。

     働くとは、自分の本来の欲求のままに「能力を発揮し」「学習し」「喜びを体験する」ことだと考えれば、自分の人生を前向きに考えることができます。

    この「インナーマネジメント」を試してみませんか。

     私がアドバイスできることはそれほど多くありません。また、ひとつの価値観、著者の考え方で解答を与えるのは傲慢であり、また危険なことです。
     ですから、皆さんが、自分自身の考えや可能性に気づき、自分自身で納得いく結論に達するまで考えていただきたいと思います。いや、感じていただきたいのです。
    【主に参考にした文献】
    「フロー理論の展開」ミハイ・チクセントミハイ 今村浩明淺川希洋志編 世界思想社
    「ブランド・ハップンスタンス・セオリー」クルンボルツ
    「インナーワーク」ティモシー・ガルウェイ 後藤新弥訳 日刊スポーツ出版社
    「仕事は楽しいかね」ディル・ドーテン 野津智子訳 きこ書房
    「坂の上の雲」司馬遼太郎 文春文庫
    「キャリアコンサルタント」中央職業能力開発協会
    「マネジメント革命」天外伺朗 講談社
    「交流分析」関連 杉田峰康 
    「積極的思考の心理学」V.パイファー 杉田峰康訳


    No.16 まとめとして

    ◆ 人や社会や自然に対する『感動と感謝』

     感動と感謝は、何気ない出来事の中に存在しています。そして、それは心の中に美しい結晶としていつまでも残ります。ここに企業の存在意義、「仕事に対する誠意」の意味があります。
     この結晶を創りつづけて行くことが、企業経営の目的になれば、すばらしいと思いませんか。
     会社がいかに組織化されシステム化されていても、その組織やシステムを担い、回転させていくのは人間です。仕事に対する誠意です。
     キーワードは「感動と感謝」です。企業で働く一人ひとりの感情、気持ちといったものに直接働きかける、シンプルで効果的なマネジメントが「インナーマネジメント」です。
     この感動と感謝を、組織内の全員が共有できるようなシステムを構築することを考えてみてはいかがでしょうか。きっと「楽しい」と思います。
      今業績を上げている会社の多くは、顧客満足の前にまず従業員満足(ES = Employee Satisfaction)を高める努力をしています。
     実際に、あなたの会社が立派な経営理念やビジョンを掲げていても、本当に社員が満足し、やる気をもって仕事をしているように見えるでしょうか?
     多くのリーダーは、社員を感動させることを「偶然に任せている」もしくは「独りよがりに思いこんでいる」のどちらかです。しかし、社員を満足させ感動を提供することは、会社が意図して仕組みを作り上げないとうまく機能しないのです。
     もし、リーダーであるあなた自身が、「部下が思うように働いてくれない、理解してくれない」と悩んでいるのであれば、まず部下が成功することのみを考えてみてください。部下を動かすためには、部下に喜びを与えることが必要であることに気付くはずです。
     「カスタマ・ディライト」という言葉があります。

    CD / customer delight / 顧客ディライト / 顧客感動 / 顧客歓喜
     顧客が期待する以上の品質やレベルの製品やサービスを提供することで、顧客に予想外の歓びや感動を与えること。またはそのような感動を与える製品品質やサービスレベルの度合いのことを言います。

     顧客満足をより発展させた理念・尺度がカスタマ・ディライトで、前者が「顧客の期待通りの製品・サービスを提供する」ものであるとしたとき、後者は「顧客の期待以上の製品・サービスを目指す」ものです。

     サービス業・接客業では、最近特に重視されており、高いサービス品質に定評のある高級ホテルチェーン ザ・リッツ・カールトンでは、カスタマ・ディライトが顧客満足(CS / customer satisfaction)に替わる基準として使われています。

    一般的な企業存続の目的
    社会が必要としている商品やサービスを提供する。
    安定した利益、継続と成長を求める。
     成長は当たり前のように言われています。
     成長しなくても企業の存在価値はあるのではとも思いますが、なぜか成長しなければならないと考えられています。
    社会も発展・成長が当たり前と考えられていますが、「なぜ」でしょう。
     成熟した社会では、これ以上成長することは難しく、あとは内面的な満足を求めるのが普通だと思うのですが・・・。
     人間はどこまで成長しようと考えているのでしょうか。
     どこまで便利を求め続けるのでしょうか。
     人間自身の「意識」はいったいどれだけ成長したのでしょうか。
     宇宙とか自然とかのレベルで、自分の存在意義を考える人がどの程度いるのでしょうか。

     企業の存在意義とはいったいなんなのでしょうか。
    そんなことを考えてしまいます。

    「インナーマネジメント」の考え方による経営理念は次のようになります。
    「社会が必要としている商品やサービス」ではなく、

    【企業理念】
    一人ひとりが感動する商品やサービスを提供する。
    企業自身が人々に感動を与える存在になる。
     と考えます。
     顧客が満足し、その企業のファンになることが、企業の安定のためには大切であり、顧客が満足するためには、まずその満足を与える社員が満足しなければなりません。これが、従業員満足(ES = Employee Satisfaction)です。そして、経営者や従業員一人ひとりの存在自体が感動的であること。その企業存在自体が感動的であることが求められます。


    Inner manegement End