inner management

社員の心に直接アプローチするマネジメント理論
指示命令ではなく「共感」。思考ではなく「感情・感性・感覚」によってマネジメントする。

自我の肥大をふせぐ

Theory of the inner management Section.6-1

  人間とは、矛盾に満ちた存在であり、頭で考えられるような合理的な存在ではありません。この人間の特性を考えないような経営理論は役に立ちません。
 この基本的特性とは、人間は常にあるべき理想の自分と実際の自分にギャップがあるということです。

 何かに成功したり出世したりすると、人から評価され自信を持ちます。だから、評価されたいと、自分をよりよく見せたいと努力しています。そして、さらに高い目標を掲げて、自分を叱咤激励しているのです。
 それは、自分の心の中にある不安感や、劣等感、自信のなさを何とかごまかして自分自身が優れた存在であると信じたいからです。この劣等感が人が仕事を成し遂げる原動力になっていますから、決して悪いことではありません。
 企業の社長や管理職で能力のあるといわれている方は、エネルギッシュであり、前向きで力強く人を元気付けるような雰囲気を持っている人が多いと思います。なんともいえないギラついた圧迫感があり、私はちょっと苦手です。 なぜかと問われるとうまく説明できないのですが、次に述べる「自我の肥大」を感じるからだと思います。
 つまり、能力のある人間は自分の存在や影響力、能力を過大評価してしまいます。これを「自我の肥大」といいます。関心が自分自身に集中し、自己中心的になり、自意識が過剰になり独自の見方にこだわるようになります。すべてのを自分の利益に結び付けて発想し、思い通りにならないとイライラしてしまいます。
 口ぐせは、「なんでうちは、こんな能力のないやつばかりか・・・。」といつも部下を叱っています。実は自分自身の態度がダメな部下をつくっていることに気が付きません。

 もともと自我は、自分の体だけを支配するのではあきたらず、際限なく拡大しようとする欲望があります。なるべく多くの他人を自分の支配下に置こうとする性質を持っています。

(1)自我の特性

 人間の基本的特性として、自我の肥大以外に次のような特性もあります。
1 他人から管理されたり支配されたりすることを嫌う。
2 自分以外のすべての外界や他人を基本的に嫌いである。
3 自己中心的であり、物に執着する。


 自我が健全であるということは、自分自身のイメージが肯定的であり、実態とそれほど食い違っておらず、社会的に見ても健全なことをいいます。自尊感情といったり、アイデンティテーの確立といったりします。
理想的な自分を具体的に言うと、
1 自分は自分であると自覚している。
2 この自分で良いという自己肯定感と自信がある。
3 人から受け入れられているという安心感と、社会にとって有用であるという自己肯定感がある。
4 健全な自己愛と受容感がある。

 しかし、現実の自分は、人間の基本的特性から逃れることがなかなかできず、自我の肥大を防ぐことが難しいものです。
 では、どうすればよいのか。自分自身でもできないことを述べるのは心苦しいのですが、私自身が意識している「修行」を紹介します。

(2)「外発的動機」より「内発的動機」を意識する

 努力して、頑張って目標を達成するというプロセスを目指すと、まず「目標」を設定しなければなりません。その目標は、理性と論理によって組み立てるもので、出来上がってくるものは、名誉欲であったり、金銭欲であったり、結局「自我の肥大」を招いてしまいます。


   目標を達成した自分が本来の自分であり、現在の自分はダメな自分ということになってしまいます。未来に対する不安感ばかりが大きくなり、安心感が保てません。
 ある人が、ヒルズ族といわれる人と話した時に、皆人相が悪いなと感じられたそうです。「もっともっと稼ぎたい。」という欲望ばかりで、ゆとりというか人的な品格を感じないといわれていました。お金を欲しがることは、塩水を飲むようなものだといわれました。つまり、飲めば飲むほどのどが渇き、もっと欲しくなってしまうのだそうです。
 「一隅照曜」と言う言葉があります。これが私の目標です。部屋の隅っこのほうでもいいから、自分の光で照らすことができる自分になりたいということです。
 内面的動機であり、これを「修行」したいと考えています。
 今与えられている仕事を誠実に一生懸命勤める。毎日の生活を大切にする。これだけです。

 「Planned Happenstance Theory」 ”計画された偶然理論”で言われているように「キャリアというものは、あらかじめ“この仕事こそ自分にもっとも適した仕事だ”と意思決定して仕事を選ぶというより、仕事の中で直面する困難や成功や出会いなどから学習することによって変化しつくられていくものなのだ」ということを信じています。
 また、トランスパーソナル心理学で言われているように、他の人の幸福を中心に生きられれば、自分も幸福になるという考え方を大切にしています。

(3)努力しない、頑張らない

 この言葉だけを聞くと、常識的におかしいといわれると思います。「努力するな、頑張るな」と言っているわけではないのです。この言葉には、社会的な成功のために努力せよとか、勝つためにがんばれとか、「外発的動機」含まれるからです。


 「内発的動機」によって行動している時は、本人は、努力している意識とか、頑張っている意識は感じません。楽しいから仕事している。その仕事に集中しているから疲れも感じません。
その意味で、頑張らなくてもいいというのです。自我の肥大も起こりません。
「努力しても、頑張ってもダメでした。」と言い訳をする人に、頑張らなくてもいいよと言えばいやな顔をされます。しかし、「すべての成功は一つのアイデアから始まった」のです。
 努力、意志の力は役に立ちません。直感は一見不合理のような形であなたをガイドします。
 潜在意識は、いつもあなたのためを思って働きます。
 客観的に観察することができるようになり、自分の気持ち「想い」と向き合って素直に自分を認めることで、自分の力で成長することができるようになるのではないでしょうか。
 以前に述べたフロー理論を使うのです。確かな満足感と、生活に楽しさを与えます。フロー状態で集中し、夢中になっていると、確かなものをつかみ、本当のものに出会ったときに感じる、確固たる感情がでてきます。

(4)頭で考えず、感じる

 注意が強く集中しているので、その行為と無関係のことを考えたり、あれこれ悩むことに注意を割かれることもない。そのため、自意識は消え時間の感覚はゆがめられます。


 このような経験を産む活動は非常に楽しいので、人々はそこから得られる利益についてほとんど考えることなく、それ自体のためにその活動を自ら進んで行うようになります。
自分の知覚と選択を信頼することです。
 偶然は必然であり、今感じている苦難も、人生にとって意味のあることですから、前向きに受容して、取り組むと、「意味のある偶然の一致」によってそれを乗り越えることができます。
考えても、いいアイデアは浮かびません。感じるのです。
自分はどう感じるのか。それが実現すればどう思うのか。思い「気づき」を大切にします。

(5)指示命令をせず評価もしない

 話をマネジメントに戻しますと、その目的は「あてになる」人材を育てることですから、元気のある会社の例で述べたように、レベル3の人材を作ることです。


 自分で課題を見つけて、せっせと勉強しています。この人については、会社は自由にやらせています。いつ、どこで誰に出会うかもしれませんし、本人は楽しみながら勉強していますから、時間とお金を与えています。  もちろん放任するわけではありません。危機的状況や変化が必要なときは、リーダーシップを発揮します。 効率をある程度我慢して、人材育成をするために本人に任せるのです。下に権限を委譲して自由に仕事をやらせ、責任は自分が取る。
 この事によって、自分よりも優秀な部下が活躍することができます。自由闊達な企業風土が生まれます。 管理型のマネジメントでは、管理職の能力で、チーム全体の能力が決まってしまいます。個人個人の能力は押されこまれてしまいます。
 管理するのではなくて、受容し、信頼し、任せるのであり、サポートする意識が大切だと思います。このことによって、長期的な視点で会社の発展と継続が計れます。チームが一丸となって自律的に目標に向かって燃えるようになります。

 評価はどうしてもマイナスの言葉になります。
 相手をダメと言う時、言っている自分は、自我の肥大が起ります。つまり、自分を正当化しないと他人を評価できないからです。自己弁護、自己の正当化が前提となってしまうのです。
 プラスの言葉は人を勇気づけたり明るくしたり幸せにしたりしますが、マイナスの言葉は暗くしたり嫌な思いをさせたり落胆させたり、心に傷を負わせて自殺まで追い込むことさえあります。人間が不幸に陥る原因はマイナスの言葉を不用意に使うからです。
→交流分析、「ストローク理論」より

(6)楽しくなければ仕事ではない

  「どんな時に、仕事を楽しく感じるか。」という質問に対する答えです。

・ 仕事に熱中している時
・ 喜ばせたい人のために何かをするとき、活動しているとき
・ 同僚たちといい関係のとき
・ チーム全体が共通の目的に向かって働いているとき
・ 自分が組織に大きな貢献をしていると自覚できるとき
・ プレッシゃーからではなく、自分の選択で動いているとき
・ 自分がいましている仕事が好きなとき
逆に「どんな時に仕事がいやになりますか」という質問の答えです。
・ 同僚と摩擦が起きているとき
・ 能力以上の仕事をしなければならないとき
・ 時間が足りなくて、質的に満足できる仕事ができないとき
・ 明白な理由もなくやり方の変更を指示されたとき
・ ルーティンワークばかりで学ぶべきものがないとき
・ 周囲が自分の言動を逐一査定、評価していると感じるとき
・ 何をやっていいかわからなくて、やる気をなくしたとき
・ 自分の時間を仕事にとられすぎたとき
・ 周囲から信頼されないとき

 この二つの質問に対する答えを見ると、今まで述べてきた「フロー理論」や「インナーワーク」の理論が納得できます。私たちは、仕事をしている時の感情が仕事の結果に関係があるとは考えないし、またそれが重要であるとも考えてきませんでした。仕事の喜びを意識することと能力を発揮すること、成果を上げることは互いにリンクしています。この関係を意識することが、「インナーマネジメント」の原則です。