Isma Sutra



維摩経 法話について

2009/11/01~2010/04/25 記

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はじめに

 2009年頃、父の本棚の隅にあった古ぼけた「維摩経法話」という本を見つけました。昭和初期の有名な禅僧、山田無文師の著書です。1968年に書かれました。当時は公的職業訓練の仕事の傍ら、キャリアコンサルタントとして人材育成の仕事をしていた頃で、仕事のためにと、心理学などいろいろと学んでいたころです。その頃、個人的なブログを書いていました。その記事が元になっています。ふと思い立って再編、加筆しました。

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維摩経について

『般若経(はんにゃきょう)』の空(くう)の思想を受け継ぎ、それを在家(ざいけ)主義の立場にたって展開させた大乗経典の一つです。
「維摩経」が成立したのは西暦紀元前後の頃。インドでは部派仏教と呼ばれる教団が栄え、出家者を中心にした厳しい修行や哲学的な思索が中心になっていた時代です。仏教が庶民の暮らしから少し遠い存在になる中、リベラルな在家仏教者たちが一大仏教変革ムーブメントを巻き起こしました。それが、自分自身の救いよりも広く人々を救済しようという「大乗仏教」の運動です。
「維摩経」はこうした流れの中で生まれた経典です。
 聖徳太子によって日本で初めて解説された仏典の一つで、奈良の興福寺に「維摩居士」の坐像があります。
 なお、サンスクリット語の原本は現存せず、3種の漢訳と1種のチベット訳が残っています。



維摩詰とは 


 主人公は釈迦でも仏弟子でもありません。古代インドの毘耶離という都市に住む一市民、維摩居士(ゆいまこじ=居士とは在家の弟子のこと)です。
 この維摩がある時病気になりました。
 釈迦が弟子たちに見舞いに行くようにすすめますが、誰一人としてそれにこたえるものはいません。かつて維摩の鋭い舌鋒でことごとく論破された経験から、みんな腰がひけているのです。唯一人、見舞いに行くことを引き受けた文殊菩薩が維摩の元を訪れ、対論が始まります。
 その対論により「縁起」「空」「利他」といった大乗仏教ならではの概念が、単なる観念の遊戯ではなく、日々の暮らしの中の「実践」の問題として浮かびあがってきます。

 たとえば、文殊が「どうしたら仏道を成ずることができるか」と問うと、維摩は「非道(貪・瞋・痴から発する仏道に背くこと)を行ぜよ」と答えました。彼の真意は「非道を行じながら、それに捉われなければ仏道に通達できる」ということを意味しています。

「理想の生き方は、世俗社会で生きながらもそれに執着しないこと」
「すべては関係性によって成立しており、実体はない」
「だからこそ自らの修行の完成ばかりを目指さず、社会性や他者性を重視せよ」。

 維摩の主張には、既存仏教の枠組みさえ解体しかねない破壊力があります。それどころか、現代人の私たちがつい陥りがちな
 「役に立つ・役に立たない」
 「損・得」
 「敵・味方」
 「仕事・遊び」
 「公的・私的」のように、
 全てを二項対立で考えてしまう思考法をことごとく粉砕します。その結果、全てを引き受け苦悩の世の中を生き抜く覚悟へと私たちを導いてくれるのです。
 そして、その手順を踏めば、どんな時、どんな場所でも、生き抜いていける力をもらうことができるというのです。

 排外主義が横行し分断されつつある社会、世界各地で頻発するテロ、拡大し続ける格差……なすすべもない苦悩に直面せざるを得ない現代、「維摩経」を現代的な視点から読み解きながら、
「こだわりや執着を手放した真に自由な生き方」
「矛盾を矛盾のまま引き受けるしなやかさ」
「自分の都合に左右されない他者や社会との関わり方」などについて考えたいと思ってます。

Index 

維摩経法話
法話について、維摩経について
「巻上之第一」仏国品第一
理想の社会をつくるために 「不起法忍」
「巻上之第一」仏国品第一
プロローグの続き
「巻上之第一」方便品第二
人間の思考をはるかに超えた巧みな方便
「巻上之第二」弟子品第三
仏弟子たちの病気見舞い
「巻上之第二」弟子品第三
仏弟子たちの病気見舞いの続き
「巻上之第三」菩薩品第四
菩薩たちの病気見舞い
「巻中之第一」文殊師利問疾品第五
維摩はなぜ病んでいるのか
「巻中之第一」不思議品第六
思慮を超えた解脱(不可思議解脱)の教え
「巻中之第二」観衆生品第七
人間とは何か 天女、仏教の極意を語る
「巻中之第三」仏道品第八
ブッダの道を行くにはどうしたらよいか
「巻中之第三」入不二法門品第九
絶対の世界に入る
「巻下之第一」香積品仏品第十
香りの国の食事と娑婆世界の菩薩たち
「巻下之第一」菩薩行品第十一
娑婆世界の菩薩たちのつとめ
「巻下之第一」見阿?仏品第十二
(けんあしゅくぶつぼん)大切な教え
「巻下之第二」法供養品第十三
大切な教え
「巻下之第二」嘱累品第十四
大切な教え
維摩経 法話のまとめ おわりに

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